筑波大学陸上競技部男子駅伝監督および箱根駅伝復活プロジェクト責任者の木路です。
皆様には、本年度の第101回箱根駅伝予選会に際しまして、朝早くまた季節外れの暑さの中での現地でのご声援、またテレビ画面を通してのご声援をいただき誠にありがとうございました。学生たちは、そのご声援に応えるべく懸命に走ってくれましたが18位という結果に終わりました。
予選会から1週間が経過し、それぞれが冷静に強化、コンディショニング、戦略の観点から見つめ直し、チーム全体で振り返りミーティングを行いました。その結果をふまえながら駅伝監督としての総括をしたいと思います。
<強化期>
まず、強化期に入る前に学生と話し合い、実施した新たな取り組みは以下の3点です。
① 7月にチーム全体でつくばでじっくり夏季強化の準備期間をとった⇒例年7月末に合宿を実施していたが、本年は体育以外の学群所属学生が多く合宿よりもチーム全体でつくばで本格的な夏季強化の基礎準備をした方が良いという判断をしたため
②7月の夏季強化準備期間終了後、先に帰省期間をとりチーム合宿からほぼ中3日で3回強化合宿を続けた⇒チーム合宿から帰省期間を挟んで状態が変わっている学生がみられるため
③ 次のステップに上がるための基準を明確にし、選抜合宿を予選会突破するためのメンバーに絞り込んでいった⇒過去の記録による期待感ではなく、現時点できっちり準備が出来てかつ、キメの練習をしっかり押さえられる選手の集団にしたかったため
7月のつくばのタフな環境での夏季強化準備期間から帰省期間を挟んだ短いスパンでの連続合宿は、例年悩まされる大きな故障での離脱者が無かったことや、流れがブツ切れにならず各合宿地でやるべきテーマ・目的が明確になり取り組みやすかったという学生の振り返りからも評価できると考えられます。
一方で、次のステップ(選抜合宿)への基準の明確化により選手間の競争が激しくなった反面、次に選ばれるために一番練習量を確保しなければならない選手層がつなぎの日の練習を行き切れない状況もみられ、強化期後半での貯めの無さ、および要所要所の例年と比較可能なキメの練習での出来の物足りなさに繋がる大きな要因となったことも考えられました。また、結果論ではありますが菅平合宿ではポイント練習を全て午前中に置くなどの暑さ対策の徹底は必要であったのではないかという反省もあります。
<コンディショニング>
コンディショニングに関しての新たな取り組みは以下の通りです。
①通常より刺激強めのメリハリをつけたテーパリングの実施⇒当日までに出来るだけ疲労を残さず、入りの流れに乗り遅れない準備
ここ数年はスタートラインにつく際に少し疲労感を感じていたことで駐屯地での流れに乗りにくかったという学生からの意見から、トレーニング頻度を落とし一つ一つのトレーニング強度を上げ、テーパリングを強調したコンディショニングを行いました。コンディショニング期間は予選会3週間前の10000m終了後から開始し、チェック練習として入れた20km、16000mで3グループから2グループと14人のエントリーメンバーの足並みが徐々に揃い、最後の6000mでは1グループにまとめることができました。学生の「調子が上がっていると感じやすかった」という感想からもある程度のピーキングの流れは出来ていたのではないかと評価できます。
一方で、通常より強度を高めている中でラストFree区間を設定したことで行き過ぎた(行け過ぎた)感がみられました。それは、当落線上の選手は出走する12人に選ばれるためのアピールから、また4年生はチームを引っ張るという使命感からその傾向がみられました。練習スコアが良いためその場では気付けなかった少しづつの無理が積もり積もって、予選会当日に猛暑に対する余力のないギリギリのコンディションにしてしまったと反省いたします。「行かない勇気と不安、行っての安心と負担」の折り合いをどうつけるか、選手本人だけでなく指導者としても改めて肝に銘じたいと思います。
<戦略・レース展開>
学生と予選会当日のレース展開に関する戦略を以下の通り共有いたしました。
①タイムより自分のいる集団の順位を意識する⇒昨年、予想していたよりもレース全体の流れが速く、自分がペース通りに行っているにもかかわらず通過順位が低く焦りが生じたため
②10km通過の総合順位を10位以内で⇒予選会の流れの特性上、前半必要以上に抑えても後半の順位アップはそれほど望めないと判断したため
事前ミーティングでは、全体の流れが不確定な部分が多く、学生たちを迷わすことのないようにタイムではなく、それぞれのグループにいてもらいたい集団の順位、具体的には金子が日本人トップから30位集団、塚田、古川、吉田、小山が昨年の塚田の展開をモデルに50位から70位集団、鈴木、松浦、川崎が80位から100位集団、堀口、丸子、伊佐、中村には100位から130位集団を目安に推移していこうと指示しました。前日の最終ミーティングでも酷暑で全体の流れが遅くなることは間違いなので、よりしっかりと自分がいるべき集団を徹底することを確認しました。特に駐屯地内では一つミスをすると200番以下の集団に飲み込まれてしまう恐れがあるので、1周目は12人固まって前から徐々に自分のポジションに落ち着くことを共有しました。
筑波大学の12名の選手の各定点での順位推移は上図の通りです。4年生3人の5km以降の落ちと8番手以下の選手が駐屯地で分断され200番以下の入りとなってしまったことが顕著にあらわれています。結果からみると、もう少しグループをまとめてペースを落とした集団走を実施したほうが総合順位は良かったのではないかという声もありますが、前回の本戦出場から5年、徐々に総合順位を落としており、ここで通るために攻めないと学生の中で予選会突破が遠い目標になってしまうという恐れを感じていた私たちは、10km通過順位を10番前後で攻める必要がありました。
今回、予選会突破という目標に向けて攻めなければならなかった私たちには非常に難しいコンディションでありましたが、10km順位が10位と28秒差の13位と充分10位が見えるところで攻められたことや、チームトップの小山が日本人9位の22位、塚田が39位と十分戦える力を示してくれたことからも今回の戦略の方向性は間違っていなかったと評価できると思います。実際、「前半から10位以内で、特に駐屯地を出てからペースアップする感覚で前の流れに乗り、勝負しに行くという戦略は継続すべき」という学生の声からも、今回の結果は戦略の面よりもコンディショニングの面の影響が大きかったと考えられます。しかし、今回攻めた戦略を採ったことによって「予選会突破し、本戦で戦うために何をすべきか」という箱根駅伝復活プロジェクトの芯の部分を再認識できたと信じています。
学生たちは前を向いて、予選会翌日から次への365日の準備を始めています。今回の振り返りにおいて、自分たちがある程度やりきったと思っていた準備が予選会突破、その先の本戦での戦いに向けてはまだまだだと思い知らされました。今回良かった点をさらにブラッシュアップし、改善すべき点を一つ一つ潰して行き、来年こそ「古豪復活~Future Blueの逆襲~」を達成できるよう頑張っていきたいと思います。
11/3全日本大学駅伝日本学連選抜チームで金子、1/2〜3第101回箱根駅伝学連選抜チームで小山が出走できる可能性も高いです。学生たちの頑張りに変わらぬご声援をよろしくお願いいたします。