大型連休を挟む4月28日~5月11日の2週間で、平成国際大学記録会、筑波大学競技会、順天堂大学記録会、法政大学記録会、日体大記録会という各大学が主催する記録会が開催され、多くの筑波大生と大学院生が参戦し、春のインカレや全日本大学駅伝予選会を見据えて各学生が記録短縮に挑んだ。その報告をさせていただきます。
まずは、5月11日(土)に日本体育大学健志台キャンパスで開催された第270回日体大長距離競技会から。三津家貴也(M2)が1500mで3分46秒33をマークし全日本インカレA標準記録を突破すると、西研人(体育3)も1万mの最終組で1着となり29分52秒自己新記録をマークした。
1万mの最終組には、西と猿橋(理工3)、渡辺(体育3)の3年生トリオが出場。17時37分のスタートだったが、この日は風が強く蒸し暑い気象コンディション。夕方でも厳しい気象条件となったのは不運だった。それを示すかのように、最終組のペースは前半から自重ぎみ。72秒前後のペースが延々と続き、5000mの通過が15分03秒と遅め。29分30~40秒を目指していた西と猿橋には、思惑とは外れたスローな流れになってしまった(自分たちが集団を引っ張っているわけではないので、文句は言えない)。
4000mで渡辺が集団から遅れ、猿橋も6000m手前で徐々にペースダウン。思いの外、暑さが堪えているように見えた。一方の西は、先頭集団の中で淡々と走っていた。1周が73秒まで落ちることがしばしばあり、早々と先頭に出る戦法もあったが、全日本大学駅伝・関東予選会に向けては、自己記録を更新することがチームとしての至上命令。ジッと我慢して、9000mで満を持してスパートした。そこからの400mを65秒で回ると、最後の1000mを2分45秒でカバーして、そのまま逃げ切って1着でゴール。自己記録を約8秒更新し、全日本大学駅伝予選会出場に向けてチーム平均タイムを29分59秒98に引き上げた。
レース後に西は「自己ベストではありますが、気象条件やペースのこともあり大幅な短縮とまではいきませんでした。ですが、少しでも1万mのチーム平均タイム短縮に貢献できた点は良かったと思います。去年はこの時期にベストを出して以降が続かなかったので、ここから気を抜かず、全日本大学駅伝予選会出場、さらには、予選通過に向けて最大限の努力を尽くしていきます。」と手応えを感じながら、過去の反省を含め気を引き締めていた。
高校時代にサッカー部から陸上部に転向し、1年足らずで5000mを14分台で走ったという異色の経歴の持ち主。3週間前の日体大記録会の5000mで凡走してから僅かな期間で立て直してきた。チーム内でもポテンシャルの高さは誰もが認めるところで、本気モードに入った西の活躍が 今後 益々楽しみである。
一方で、同じく29分台を狙っていた猿橋が崩れたのは意外だった。というのも、3週間前の記録会で午前中の早い時間帯にもかかわらず30分00秒で走っており、しかも、しっかりと練習を積んできたからだ。課題であったスピードにも難なく対応できるようになっており、走力の向上は明らか。西と同等の走りは十分に期待できたはずだったが、関東インカレのハーフマラソンに向けて休みなくハードな練習を積んできた影響が出てしまったようだ。
29分台の記録を持つ渡辺だが、関東インカレのハーフマラソンに向けて、現在は、体力を戻している段階であり、目先のレースよりもトレーニング重視のスタンスで進めている。4000mまでは3分ペースで走っていたが、そこから大きくペースダウンしてしまった。怪我による練習の長期離脱から復帰して間もない状況では、この日の結果も仕方ないところではある。練習を積んでいる疲労もあっただろうが、本人は「ペースが落ちたところを3分10秒以内ではカバーしたかった」と。それができずに悔しさはあると本人の弁。インカレまでの残りの2週間で、調子を上げていってもらいたい。
1500mでは、中距離パートに所属する三津家がやっと実力通りの記録(3分46秒33)を出してくれた。今季は、好調な滑り出しを見せていたので、記録が出る予感はあった。
400m毎のスピリットタイム(最後は300m)は、59秒-60秒-60秒-45秒。ほぼイーブンで走ったように思うだろうが、最後の100mに17秒を要している。全日本インカレのA標準記録を突破したことは大いに喜べることだが、何とも惜しいレース。15秒でカバーできていれば日本選手権の参加標準記録(3分45秒0)を突破していた計算だからである。
突破した日本インカレA標準記録と自己記録、惜しくも届かなかった日本選手権参加標準記録。この2つの記録の間でのフィニッシュとなり、ゴール後の写真でも、そんな複雑な心境がうかがえる。
それでも3秒以上の自己記録短縮であるから、三津家自身も次のレースに向けて意欲が倍増する記録会となった。今後の活躍が楽しみである。
その他の記録会で目立ったレースの報告をさせていただくと
5月5日(祝)に開催された法政大学記録会に川瀬宏夢(医学5)が出場。関東インカレを見据えて今季初の障害レースに臨んだ。本来ならば、4月の記録会で今季の障害レース初戦を走って、この法政記録会で自己ベストを狙う予定が、怪我で計画に狂いが生じてしまった誤算があった。
そこで、練習の消化状況からゴールタイムは気にせず、2分55秒⇒6分00秒で入ることを目標に置き、インカレ前の実践練習という位置づけでレースに臨むことにした。入りの1000mが予定より遅く2分59秒となってしまったが、2000mを予定通り6分00秒で通過し、しかも、ラスト1周を余裕を持って迎えることができたことに予想以上の感触を掴むことができたようだ。
ゴールタイムも9分01秒99と自己ベストから僅か0.5秒の遅れ。体力的な部分では納得できるものだったが、「障害の飛越に課題が残った」とレース後に話していた。まあ、今季初の実践での障害飛越であるから、今後の練習で修正していくことができるだろう。関東インカレは過去2年で決勝進出まであと僅かという悔しい思いをしている。病院でのハードな実習は続くが、今年こそ入賞を決めてもらいたい。
また同じ医学群に所属する田川(医学3)も力を付けている。4月28日(日)に開催された平成国際大学記録会の1万mで30分58秒12で22秒も自己記録を更新した。午前中の早い時間帯で強風が吹く気象コンディションは記録を出すには厳しい条件だったが、後半も粘って31分を切ったことは評価できるだろう。
さらに5日後の5月3日(祝)にも順天堂大学記録会の5000mに出場し、14分46秒07の自己ベストをマーク。平成国際大学記録会から休まずに練習しながらマークした記録に自信を深めた様子。この春の最大目標は、5月18日の平成国際大学記録会で大幅な自己ベストを更新することである。全日本大学駅伝予選会のメンバー入りに絡むことができるか!?
田川は昨夏からグングン調子を上げ、昨秋の箱根駅伝予選会に向けた練習過程から評価すると、29分台で走っても何ら不思議ではない走力を有しているのは間違いないこと。この2戦の勢いをそのままに次戦に臨んでほしい。結果は自ずと付いてくるはずだ。
最後に、全日本大学駅伝予選会に向けて
西が自己記録を更新したことで、チーム平均は29分59秒98と僅かにタイムを短縮し、ギリギリ29分台に載せた。20校に出場権が与えられるが、現在は20番目である。他大学も記録を伸ばしてくることが予想されるので、まだまだ記録の短縮が必要な状況となっている。5月18日の平成国際大学記録会が正念場。チームとしてしっかりと狙っていきたいと思います。