第96回箱根駅伝予選会 結果報告
第96回箱根駅伝予選会の結果発表が始まり、
晴れ渡る青空の下、第6位に筑波大学の名が響き渡った!
うぉーーー!筑波大学の名前が6番目に呼ばれると、長距離パートの学生と陸上競技部員、本学教職員、陸上競技部OBOG、卒業生、クラウドファンディング支援者の方々が大きな歓声とともに喜びを爆発させ、歓喜の輪に囲まれた学生たちの喜びは最高潮となりました。
私は、駅伝監督としてチームを率い、チームつくば(=支援者を含めた広い意味で)のメンバーで、至福の瞬間を分かち合うことを目標としてやってきました。今日の予選突破は、“チームつくば”が勝ち取ったもの。全員の勝利だと思います。
四半世紀の間、止まっていた時計の針が新しい歴史の時を刻みだそうと再び動き始めます。この歴史的瞬間の感動を共有できた全ての人に伝えさせていただきます。
おめでとうございます!そして、ありがとうございます!
26年振りに開いた箱根駅伝への扉
第96回箱根駅伝予選会(2019.10.26)を突破して
筑波大学陸上競技部
男子駅伝監督 弘山 勉
大会当日の朝、ホテルの窓から見える空を見上げて「今日は暑くなりそうだな」と思った。天気予報の情報からも「今日のレースはスタミナと精神力を伴う消耗戦になるな」と厳しい戦いを覚悟したが、漠然と「この天気が有利に働くかもしれない」とも思った。
出発20分前にロビーに下りると、すでに多くの選手が待っていた。「今日は予選通るかもな」という直感めいたものがあった。些細な行動ではあるが、やはり昨年まではとは違う。闘志を内に秘めながらも落ち着いた学生の表情に安心してホテルを発った。
ウォーミングアップに移っても、学生たちの姿やランニングフォームを見て「いけそうだな」と私の中では次第に自信度が増していくような感覚があった。それは、練習に裏付けられた学生たちの自信の表れが作り出す空気に他ならない。
昨年までは、予選を通るために必要なタイムを練習で追ってきた。この練習ができなければ予選は通らないという理屈である。意図としては、意識付けという部分もあった。
それが昨年まで予選突破できなかった原因とは決して思っていないし、チームがステップアップするために必要な過程でもあった。今年は、昨年までの上手くいかなかった部分を反省し練習計画を見直した。
予選会までのアプローチ変更の理由はそれだけではない。学生によるチーム改革(7月)の期間があり、箱根駅伝予選会に向けた準備のスタートが出遅れたからである。
その影響があったのは、7月中旬に見た学生たちの走りからも明らかだった。決定的な持久力不足・・「強度の高い練習は、先に持ち越す必要があるな」と当初のプランを変更して対応せざるをえない状況があった。
チーム改革を経て、一方では、学生たちの練習に対する姿勢や取り組みに変化があらわれてきた。練習に関するミーティングを頻繁にするようになり、今までできなかった数々のことができるようになってきた。
「これなら何とかなる」=予選会に間に合うかもしれないと、とにかく「じっくり」「確実に」練習をこなしていくことにした。表現は難しいが、心のこもった練習が増えるだろうという安心感のようなものである。
「1回の練習も無駄にしないこと」「ケガ予防の対策を徹底すること」これらのことを口酸っぱく伝え続けた。“じっくり”と言っても、ペースを抑えるだけで、私が課す練習は厳しいと思う。おそらく、そうだろう。
ペースを上げて走りたいところを学生たちも私もグッとこらえて、練習を重ねた。「これで間に合うのか」チームに付きまとう“不安を如何に払拭するか”が私の役目と自分自身に言い聞かせて、学生たちに対峙するようにした。
成果が予想以上であることが9月中旬の合宿で明らかになる。昨年まで消化するのも苦労する練習を、さらに負荷を高めたにもかかわらず、Aグループの集団が最後まで崩れなかったのだ。
私は「このまま練習できれば、予選突破が可能になる」という高揚感を抑えられずにいた。学生たちも同じ気持ちだったに違いない。そんなチームの状態アップに伴い、学生から要望が出された。それは予選会の6週間前のこと。
予選会までの練習計画を出してほしい!!
実は、私は何週間先まで練習計画を出すのが嫌いである。「練習計画は、チームや選手の状態で臨機応変に考えるべきものである」という持論があるからだ。しかし、学生たちからの強い要望に折れた私は、異例の6週間メニューを出すことにした。
長期メニューの提示は、私の中ではリスクが伴う冒険、一方で、学生の中では確実性や安心の向上になるであろう。この対比するメリットとデメリットが表裏一体となって付きまとうことになる。この両立は意外と難しい。
ある意味では冒険となる計画。それを学生たちは、入念に話し合いながら実行。ハイレベル、且つ、確実に、完璧にこなしてくれた。残念ながら怪我で2名が離脱してしまったが、素晴らしい雰囲気を最後まで持続したままである。学生たちの集中力に敬意を表したい。
そして、最後の調整練習を終えた10月23日。私は「予選突破できる」と確信した。
正しい表現をするなら、確信ではなく、「この状態で予選突破できなければ、この先、どうすれば良いのか=路頭に迷うことになるじゃないか」という気持ちである。
そして迎えた大会当日。暑さが気がかりだったが、条件は皆同じ。やってきた練習と学生たちの状況判断を信じて送り出した。
9時35分スタート前、筑波大学応援団『WINS』が配置に着くのが見えた。学生たちも「おー!WINSだ!この日を夢に見ていた」と興奮ぎみに話す。WINSの応援団部員の学生も「前から応援に来たかった」そうで、両想いが実現。大学全体がチームになってきている証の一つだろう。
いざ、スタート。私とスタッフ、サポート学生たちで駐屯地の周回コースを回ってくる選手を見守った。表情、息遣い、汗の状態を5km地点で確認して、公園側に出て15km地点で待った。その間、10kmで、10人通過順が10位、タイムだと12位と速報が流れた。
サポート学生は、ボードに速報を書いて、選手に状況を伝えた。10km地点の暫定順位を知った選手たちは、俄然やる気が増したという。選手の誰もが「自分が頑張れば」と気を引き締めたに違いない。それがチームプレーの始まりの合図としたら、12位という僅かに及ばない状況は最高の順位と言えた。
15km地点では、金丸と西、猿橋の3人が一緒にやって来た。個人順位は20位前後で、タイムは45分25秒。この日の暑さで、予定のペースを上回る走りは驚異的と言っていい。「ここまで強くなっていたか!?」この3人の貯金は大きい。
その他の選手も苦しい表情を見せながらも身体は動いている。速報は8位。17km地点、チームメイトがボードで選手に知らせる。「これなら!」と選手全員にアドレナリンが大量に分泌されたはず。残り4kmの粘走の開始だ。
粘走を順位変動(15km⇒ゴール)の数字で具体的に示すと
金丸:22位⇒13位(-9)
西 :23位⇒19位(-4)
猿橋:24位⇒20位(-4)
相馬:46位⇒40位(-6)
川瀬:89位⇒53位(-36)
小林:148位⇒119位(-29)
岩佐:136位⇒121位(-15)
山下:160位⇒135位(-25)
伊藤:133位⇒159位(+26)
山本:204位⇒184位(-20)
ほとんどの学生が最後の6kmで順位を上げている。15km⇒20kmのスプリットタイム(チーム)は、何とトップ通過の東京国際大に次ぐ2位という。昨年まで後半にペースを落とすスタミナ不足の弱小チームからの脱却は、この1年間で大きく成長したことを示す学生に与えたい勲章。この数値は誇りたい。
そして、11時10分。運命の成績発表が始まった。その前に、沢山の方々から「おめでとう!」と言われたが、公式結果が出されるまで喜ぶわけにはいかない。7位か8位か!?
祈るように1位からの順位を聞いていると、まさかの6位!思いもよらぬ上方修正の順位に、喜びは極限に達した。
「我がチームが力を出し切り、他校が失敗すれば、6位か7位はあるかもしれないな」とは思ってはいたが、私が思い描いていた中で最高の順位を本当に獲得できるとは・・・最高の気分である。走った選手とサポートに回った学生たちとで作る歓喜の輪は至福の時。この瞬間を学生たちと応援・支援者の方々と味わうことを夢見てやってきた。
2015年に駅伝監督に着任して以来、苦労したことが走馬灯のように流れた。
この日の結果は、私が指導するようになって4年半、箱根駅伝を本気で目指したが夢かなわず巣立っていった学生たち(卒業生)が魂を育み、心を結び合い、実績を積んできたから。吉成、勝谷、河野、川瀬(医学なので現在も学生)らの歴代駅伝主将が本気の取り組みを繋いできた結果が本予選会で表れたのは間違いない。
また、学生と私の情熱に賛同いただき、協力してくれた方々が沢山いたからです。クラウドファンディング・筑波大学基金の寄附者の皆様、合宿でお世話になった宿と自治体の方々、筑波大学陸上競技部OBOG会、茗渓会、本学教職員、本学体育系研究領域の各研究室教員に大学院生、陸上競技部、学生の保護者、挙げればキリがないほどの協力を賜りました。この場をお借りして、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
さあ、念願の箱根駅伝本戦出場です。目標は、シード権獲得しかありません。それ以外の目標設定はあり得ませんから、本気で目指したいと思います。私たちは挑戦者。生き生きと純粋に箱根路を満喫できるように、しっかりと準備していきます。
箱根路で旋風を引きおこし、金栗四三・大先輩の想いと願いが詰まった箱根駅伝で、筑波大学ここにあり!を少しでも示すことができるよう頑張っていきます。
さらなるご支援や応援をお願いすることになると思いますが、今後とも筑波大学をよろしくお願い致します。
第96回箱根駅伝予選会 筑波大学の個人成績
順位 | 選手名 | 所属 | 記録 |
---|---|---|---|
13 | 金丸逸樹 | 体育4 | 1:03:53 |
19 | 西 研人 | 体育3 | 1:04:01 |
20 | 猿橋拓己 | 理工3 | 1:04:04 |
40 | 相馬崇史 | 体育3 | 1:04:44 |
53 | 川瀬宙夢 | 医学5 | 1:05:01 |
119 | 小林竜也 | 体育1 | 1:05:59 |
121 | 岩佐一楽 | 体育1 | 1:06:01 |
135 | 山下和希 | 体育3 | 1:06:11 |
159 | 伊藤太貴 | 体育2 | 1:06:32 |
184 | 山本尊仁 | 理工2 | 1:06:52 |
194 | 杉山魁声 | 体育2 | 1:07:02 |
246 | 児玉朋大 | 体育3 | 1:07:56 |