2021年11月23日に関東学連10000m記録挑戦会が相模原ギオンスタジアムにて開催され、参加標準を突破した学生が10000mのチーム平均記録を短縮すべく出場しました。
また、12月4、5日に行われた第293回日本体育大学長距離競技会において、秋の強化練習の成果を発揮し自己記録を更新するため10000m、5000mに多くの選手が出場しました。今回はその結果を報告させていただきます。(記事担当:國井)
【11/23 関東学連10000m記録挑戦会】
10月23日の予選会敗退から1か月後、4年生が引退し、新チームとしての最初の試合になった。箱根駅伝本選に出られず、大きな目標を失った私たちは「全日本大学駅伝出場」を目標に定め、来年6月に行われる全日本大学駅伝の選考会を勝ち抜くことを誓った。しかし、その選考会に出場するためには「チーム上位8人の10000m記録」を出場校20番以内に入る必要がある。
我々筑波大学は2021年11月時点で22番と、このままでは全日本大学駅伝出場どころか選考会にも出場することができない。さらに来年の春シーズンには関東インカレと4年生の就職活動、教育実習の時期が被ることがあり10000mに専念する選手を多く出せない。
選手層が薄いのが未だ課題としてある中で、エース級の選手が競技に専念できないのは大変もどかしいが、これこそ文武両道を掲げる筑波大学の宿命であり、そうした難題に自ら取り組むことが多いのも筑波大学の魅力であると私たちは考えている。
よって10000mの記録を短縮するならば、夏~秋にかけて走り込みやハーフマラソンの練習を行ってきて長距離に対応できる “今” が年に一度のチャンスであるということになる。選手もそれは自覚しており、予選会敗退を通した精神的・肉体的疲労を抱えつつ、ハーフマラソンからよりトラックレースに対応できるような練習を積んで、これらの試合に臨んだ。
【3組・4組】
3組には塚田(医学2)、長谷川嵩(医療科学2)、永山(体育3)が出場した。やや風の強いコンディションで、序盤はやや牽制気味な展開となった。塚田がスタートから先頭で走るも、中盤で苦しくなったことろで粘り切れず3分ペースで押し切ることはできなかった。
それでも塚田と永山はわずかに自己ベストを更新。1か月前に予選会を走った長谷川は、5000m以降に身体が動かなくなり、苦しい走りとなった。ハーフマラソンを走り、それでも強化練習を積んでいくというハードなスケジュールの中で疲れが出てしまい、記録に結びつけることができなかったようだ。
4組には吉田(体育1)が出場。吉田は高校時代に中距離を専門にしていたが11月からは箱根駅伝予選会を走ったメンバーと同じメニューを消化し、長距離の練習を十分に積んできた。自身2回目の10000mだが、どのくらい記録を伸ばせるか、大いに期待がかかった。
後方からのスタートとなったが先頭集団に入ってレースを進め、5000mを14分55秒で通過。それでも余力はあるような表情だった。残り2000mを切って苦しい表情を見せたが、ラストは持ち味のスピードを活かして6着でフィニッシュ。1年生で、2回目の10000mで30分18秒という記録はまずまずの結果だろう。冬季練習で体を鍛え、来春にどう爆発するか、とても楽しみだ。
【7組・8組】
この組には平山(体育2)、皆川(物理2)、國井(体育3)が出場。予選会でも好走した2年生コンビと、去年はケガに苦しんだが夏から順調に練習を積み、チーム上位まで上り詰めた國井がどう記録を更新していくか期待がかかった。
レースは2分55秒/km前後を安定して推移していた。平山と國井は集団前方、皆川は後方からレースを進めていった。5000mを14分45秒で通過したあと、國井が遅れ始める。平山も集団の中で何とか粘るが、後半は苦しい表情を浮かべていた。結果は平山が自身初となる29分台を記録したが、残りの2人は粘りの走りができず、凡走となった。
各校のエース級選手が集い始める8組には小林竜(体育3)、福谷(体育3)が出場した。今年のホクレンディスタンスやインカレを経験してレースに慣れている2人がどうレースを展開するのか、またこれまでの組であまり結果が振るわなかった選手の分まで好記録を出してくれると祈った。
レースは一定のペースで外国人留学生がペースメイクをしていったが、中盤から小林が出遅れ、福谷も後半は単独走になってしまった。2人とも思うように体が動かず、もがきながら走り、なんとかゴールした。
今回の結果は全員が「練習でのイメージと試合でのパフォーマンスのズレ」を感じた試合となった。予選会の疲れがあるのはもちろんだが、「練習ではとても良い練習が積めたのに。」「練習では耐えられた動きで粘ることができなかった。」といった感想を持つ選手が多く、レースに向かっていくピーキングの難しさ、練習と試合のギャップを縮める大変さを改めて実感させられる試合となった。
この結果を受けて、2週間弱後に控えた日体大記録会では各々がこの反省を活かし、今度こそ自己記録を大幅に更新することを誓った。
<出場選手コメント>
永山龍吉「今回10000mに出場し、31分18秒05で走り、10秒ほど自己ベストを更新しました。当日は風が強く、非常にタフな走りが求められました。その中でも後半の失速を最低限に抑えられたことが今回の自己ベストに繋がったと考えると、練習の成果を出すことができたのではないのか、と思います。しかし、これまでの練習過程から『30分30秒は出せる、最低でも30分台は確実だろう』と自信をもって臨んだだけに、悔しさが残るレースでした。自身としては来週末の日体大記録会で今シーズン最後のレースとなり、来年になれば最高学年という立場になります。ラストイヤーに弾みをつけられるような走りを次のレースではしたいです。」
吉田海渡「今回のレースではPBを40秒近く更新することができ、自身の成長を目に見える形で感じられました。またチームの10000m平均タイムを上げられ、全日本予選突破に向けて少しでもチームに貢献する走りができてホッとしています。日体大記録会では5000mに出場する予定なので走り込んできて鍛えられた粘りの走りを後半で発揮し、夏に記録した自己ベストをさらに更新できるように体調を整えていきます。」
組 | 順位 | 氏名 | 所属 | 記録 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
3 | 13 | 塚田萌成 | 医学₂ | 31分06秒53 | PB |
3 | 16 | 永山龍吉 | 体育3 | 31分18秒05 | PB |
3 | 21 | 長谷川嵩汰 | 医療科2 | 32分23秒26 | |
4 | 6 | 吉田海渡 | 体育1 | 30分18秒39 | PB |
7 | 14 | 平山大雅 | 体育2 | 29分50秒24 | PB |
7 | 17 | 皆川和範 | 物理2 | 30分14秒89 | |
7 | 19 | 國井辰磨 | 体育3 | 30分21秒92 | |
8 | 13 | 福谷颯太 | 体育3 | 29分41秒53 | |
8 | 17 | 小林竜也 | 体育3 | 30分06秒04 |
【12/4~5 日体大長距離競技会】
12月4日の10000mには先日の10000m記録挑戦会を走った選手が出場。2週間前の悔しさを晴らすべく、またチームの全日本予選出場に向け選手は自己記録の更新に臨んだ。
しかし予選会に向け練習を行ってきた選手は試合の1週間前にワクチンの二回目接種があり、当然接種直後は体調を崩してしまいあまり練習を積むことができなかった。ハンデを抱えながら、現状での最高のパフォーマンスをどの程度発揮できるか、が求められるレースだった。
12/4 10000m
コンディションとしては風もなく、温かい日差しが降り注ぐ好条件。まずは塚田と國井が魅せてくれた。
3組目に出場した塚田は中盤から一人で走る場面もあったが後半も失速することなく、レースの流れにうまく乗れ大幅に自己ベストを更新。自身初の30分台を記録した。
國井は7組に出場。東洋大学の選手が終始レースを支配し、序盤から縦長の集団になる展開となった。5000m過ぎから先頭集団がペースを上げ、それにつくことはできなかったが粘りの走りを見せ自己ベストを15秒更新した。
彼らのチーム内の実力は中堅だ。我々のチームは中間層に依然として課題が残っている。予選会の反省点としても上位層は他大学と互角に戦えているのに、中間~下位層の記録の出来が今年の敗退を招いたといっても過言ではない。それを中堅の選手は自覚しており、「来年は自分がチームを引っ張るんだ」という気持ちがタイムに現れたのかもしれない。
温かい気候の日中のレースとは異なり、福谷の出場する9組目はグッと気温の下がった夕方にレースが行われた。レース前に「集団の前方でレースを進めていく」という宣言通り、序盤から先頭の好位置を常にキープしていた。レースは牽制気味に進んでいったが、5000mを過ぎて一気にペースアップ。
前半に余力を残していた分、後半のハイスピードにもうまく対応することができ、ラスト1000mを2分47秒でまとめ、29分11秒71の好記録をマークした。この記録は筑波大歴代6位という記録である。福谷は関東学生連合チームとして箱根駅伝を走る予定で、今年チームとして箱根駅伝に出場できなかった分、彼自身がどう感じ、それをチームに還元していくのか注目である。
出場者コメント
塚田萌成「3日前の刺激ではうまく走ることができずに不安でしたが、うまく集団の流れに乗れ自己ベストを出すことができました。しかし、まだまだ結果には満足していません。これからの冬季練習で自分の課題としっかりと向き合い、来春には何段階も成長した姿をみせられるように頑張ります。」
福谷颯太「日体大記録会に出場し、29分11秒でベスト更新+関東インカレA標準突破を達成することができました。レースは前半の5000mが想像以上にゆっくり入り後半上げることになりましたが、その難しいレースでも粘り強く走れました。他大学の選手との差はまだまだありますが、トラックでもひとつ形作ることができてよかったです。ここからロードに再度移行していき箱根駅伝に標準を合わせていきます。最後まで変わらぬご声援のほどよろしくお願いいたします。」
12/4 日体大長距離競技会 10000mの結果
組 | 順位 | 氏名 | 所属 | 記録 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
3 | 21 | 塚田萌成 | 医学₂ | 30分36秒14 | PB |
3 | 32 | 永山龍吉 | 体育3 | 31分09秒70 | PB |
5 | 24 | 藤原潤乃佑 | 体育2 | 30分54秒80 | PB |
5 | 25 | 松村匡悟 | 体育3 | 30分55秒56 | |
7 | 11 | 國井辰磨 | 体育3 | 29分40秒02 | PB |
7 | 26 | 皆川和範 | 物理₂ | 30分05秒56 | |
9 | 4 | 福谷颯太 | 体育3 | 29分11秒71 | PB&歴代6位 |
12/5 5000m
前日の10000mの好記録で、チームメイトから勢いをもらい、5000mに出場する選手は「僕も絶対に自己ベストを更新してやる!」という強い気持ちと「同じ練習をしてきたのだから自分も良い走りができるだろう」という自信がスタート前にみなぎっていた。
12組目には中山(体育1)が出場。最後方から出発していき、どんどん遅れた選手を拾っていくレース運びで後半には集団前半まで上がると、自身初の14分台でゴール。昨日に引き続き後続の選手に勢いを与える良い走りだった。
20組目には坂見(体育3)、金子(理工1)がレースに臨んだ。この2人は奇しくも「能力は高いのに=ポテンシャルはあるのに、ケガや離脱でなかなかレースに出れなかった」という背景がある。スタートラインに立つことの難しさを痛感している2人がレースでは今までの悔しさを爆発させてくれた。
先頭集団で様子をうかがっていた金子がラストで飛び出し、ぶっちぎりの組トップ。自身2年半振り・大学初のレースで14分31秒46という素晴らしい自己ベストだ。坂見も約2年ぶりの自己ベストで、レース後は2人で喜びを分かち合っていたのが印象的だった。
36組には吉田が出場。早い時間帯に自己新記録をマークした1年生3人に負けない走りを見せた。この組はスタートからハイペースで流れた。最後方を走る田でも400mの入りが65秒。この厳しいペースを後方から冷静にレースを進め、自己ベストを20秒更新する14分19秒をマークした。高校まで中距離(800m)選手だったことを、もはや感じさせなくなっている。
驚くのは、その安定感。入学以来、1,500~10000mの種目で13回のレースを走り、何と自己新を10回もマークしている。これは驚異的と言って良く、素晴らしいレースセンスの持ち主と言ってよいのではないだろうか。
この日のレースの最も注目すべきは平山(体育2)の13分台だろう。気温が下がり、風もない好コンディションの中で、13分台を狙えるような良いペースのままレースは進んでいった。途中苦しそうな表情をみせつつも「今日絶対に13分台を出す!」という気持ちが、苦しい場面においても彼を動かし、ラスト1周を61秒でカバー。見事筑波大学史上初となる2年生による14分の壁突破となった。
平山は去年は怪我に苦しんだ一年だったが、練習を順調に積んでいき今年は大躍進。途中思うように走れない時期を乗り越え、予選会での覚醒の勢いそのままに、トラックでも新エースとしての実力をみせた。
出場者コメント
金子佑太朗「今回が大学初レースかつ学外記録会ということでかなり緊張しましたが、ここまで完璧な練習ができていたので自信をもって臨みました。タイムのことだけでなく練習してきたことを発揮して組内で勝ち切れたことが特に良かった点であると思います。来年はチームに走りで貢献できるような選手になります。」
平山大雅「今回の日体大は14分切りを目標にして臨みました。2週間前の10000mで思うように走れず、コロナワクチンの接種もあり調整が難しい中でしたが目標の14分切りを達成できました。昨年は故障の繰り返しでほとんど試合にすら出れずひとつもPBを更新できませんでしたが、今年は故障なく継続した練習を積むことができ、すべての種目でPBを更新することができました。今回の結果を受け、年末の平成国際大学記録会の10000mにも出場することになったのでチーム平均タイムの短縮のためあと1レース走り切ります。」
12/5 日体大長距離競技会 50000mの結果
組 | 順位 | 氏名 | 所属 | 記録 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
12 | 9 | 中山純静 | 体育1 | 14分59秒89 | PB |
20 | 1 | 金子佑太朗 | 工シス1 | 14分31秒46 | PB |
20 | 14 | 坂見一将 | 体育3 | 14分46秒11 | PB |
22 | 34 | 小林大晃 | 体育2 | 15分26秒93 | |
23 | 13 | 長谷川健太 | 資源1 | 14分38秒34 | PB |
36 | 9 | 杉山魁声 | 体育4 | 14分08秒48 | |
36 | 20 | 吉田海渡 | 体育1 | 14分19秒16 | PB |
39 | 4 | 平山大雅 | 体育2 | 13分59秒81 | PB&歴代5位 |
今回の試合、特に日体大記録会では自己ベストを更新した学生が出場者の70%を超え、秋のトレーニングの成果が結果として現れてきた証拠なのではないだろうか。
逆に自己ベストを更新できなかった残りの3割弱の選手にとっても自分に何が足りないのかを見つめなおす良い機会になったと思う。成長への貪欲な姿勢をもって新年を迎えようとしている。
さて年が明けると福谷が桐の葉を身にまとい、箱根駅伝の舞台を駆ける予定です。福谷にはたくさんの(目に見えないものも含め)応援を力に換えて元気に走ってもらいたいと思います。そして新年度のチームにどんな勢いをつけてくれるか楽しみです。
新しい体制でチームが順調に動き始めていることをご報告申し上げるとともに、今後ともご声援のほどよろしくお願いいたします。