第98回箱根駅伝は、2022年1月2~3日に開催され、関東学生連合チームの5区(20.8km)走者として出場した筑波大学の福谷颯太(体育3)は、区間10位相当となる1時間13分01秒で走破した。
関東学生連合チームは、1区の中山選手(日本薬科大)が区間7位相当で好走する理想の滑り出しから、2区の並木選手(東京農大)⇒3区の斎藤選手(立教大)⇒4区の村上選手(上武大)とやや順位を落としながらも懸命な走りでタスキを繋いだ。小田原中継所では14位相当。5区の福谷に往路の順位が託され、天下の険に向かって福谷は走りだした。
関東学生連合チームの学生たちで考えた目標は、総合10位相当である。小田原中継所で10位の早稲田大学まで1分23秒の差。大幅に順位が入れ替わることが多い5区では十分に捉えられるタイム差に、福谷への期待は大きくなった。
だが、5区を経験したことのない選手にとって「自分がどれだけ走れるのか?=急勾配の山登りに対応できるのか?」不安を抱えた状態で走っていくことになる。究極の抗重力運動(上り坂競走)で、5区初体験の選手がどれほどのパフォーマンスを発揮できるかは未知数と言える。
日本テレビの定点計測の速報データ(下記)からすると、福谷は、前半の緩い上り坂では区間トップから1キロ当たりで5秒、急勾配の坂では1キロ当たり7秒の差をつけられていることがわかる。芦之湯から元箱根までの下り坂では1キロ当たり10秒以上も離されていることを考えると、福谷は起伏の激しいコース、とくに下り坂に対応できなかったことが顕著に出ている。
【日本テレビ 箱根駅伝 記録速報データから】
地点(距離)通過順位(個人記録、区間順位、1位との差)
函嶺洞門( 3.5km) 16位相当 ( 10:49 13位相当 1位との差 00:17)
大平台 ( 7.0km) 13位相当 ( 22:54 9位相当 00:36)
小涌園前(11.7km)14位相当 ( 40:41 10位相当 01:09)
芦之湯 (15.8km)15位相当 ( 56:28 10位相当 01:37)
元箱根 (18.7km)15位相当(1:05:56 10位相当 02:06)
芦ノ湖 (20.8km)15位相当(1:13:01 10位相当 02:28)
0-3.5km: 10’49″(3’05″42/km)
3.5km-7km: 12’05″(3’27″14/km)
7km-11.7km: 17’47″(3’47″02/km)
11.7km-15.8km: 15’47″(3’50″09/km)
15.8km-18.7km: 9’28″(3’15″86/km)
18.7km-20.8km: 7’05″(3’22″38/km)
福谷自身にとって下り坂は得意なわけではないが、レースの後半(とくに下り坂)にパフォーマンスが低下した原因は、12km地点で出現した痙攣症状による影響が大きかったように思う。
実際は、太もも裏(ハムストリング)が痙攣する一歩手前の症状だったらしいが、全力で走れる状態ではなかったようだ。下り坂は脚を伸ばして走っていくために、ハムストリングがより伸ばされることから、速度を上げて走るのは厳しかったのだろうと思われる。(実際に、痙攣が起こらないように走らざるを得なかったとレース後に話している)
そんな状況から一つ順位を落としてしまい、往路のアンカーを務めた身としては残念な気持ちが大きかったようで、ゴール後は痙攣症状を悔やんでいた。
だが、10位相当(9人に負け)と真ん中より上の区間順位相当で走破し、自分が立てた目標(1時間13分00秒)に1秒及ばない記録、そして、シード圏内10位の東海大学までのタイム差を1分1秒に縮めた走りには、及第点を与えてもらえるのではないだろうか。何より翌日に復路を走る選手の気持ちが昂る成績(タイム差)で往路を締めくくれたことに、福谷は、ゴール後に安堵の表情を浮かべていた。
翌日の復路は、6区の鈴木選手(麗澤大)⇒田島選手(慶應義塾大)⇒大野選手(大東文化大)⇒竹井選手(亜細亜大)⇒諸星選手(育英大)と最後までタスキを繋いで、総合14位相当でゴールした。
例年、復路ではタスキが繋がらず、繰り上げスタートになることが多い関東学生連合チームが、ハイレベルの往路で15位相当と健闘し、復路は10位相当という大健闘のパフォーマンスを発揮した。とくに9区の竹井選手が区間6位相当、10区の諸星選手が区間5位相当という素晴らしい走りに連合チームの喜びは最高潮に達したと言える。
それもそのはず、関東学生連合チームが発足した11月中旬からの1カ月半、斎藤キャプテンと金子マネージャー(拓殖大)、松尾・関東学連幹事ら学生でミーティングを重ねて、結束を深めてきたからだ。学生たちで話し合って決めた目標が10位相当。
目標達成まで僅か1分39秒という結果に、連合チームの学生たちは、満足しないまでも、しっかり戦ったという充足感を得ることはできたように思う。一方で、予選敗退校のエース級を揃えても14位相当にしかなれない箱根駅伝の本当のレベルを肌で感じることで、身が引き締まる感覚も覚えたはずである。
第98回大会は、青山学院大学が10時間43分42秒の大会新記録で制した。2位に10分51秒もの大差をつける圧勝であり、その異次元の強さに驚くばかりだが、一方で、予選通過校の中央大学が6位、法政大学が10位、神奈川大学が12位に入った事実には勇気づけられる。
筑波大学・長距離チームの学生たちは、今回、福谷の付き添いや5区の給水係(2か所)として、または、補助員として箱根駅伝に係わった。福谷の走りと連合チームの健闘だけでなく、箱根駅伝そのものに触れ、相当な刺激をもらったようだ。
9か月後に迫る箱根駅伝予選会に向けて、チームの選手層を高めるべく、強化計画を立案し、しっかりとトレーニングを継続していきたいと思う。
第98回東京箱根間往復大学駅伝競走
主 催:関東学生陸上競技連盟
日 程:2022/1/2(日)~1/3(月)
コース:東京・大手町~箱根町芦ノ湖 10区間(計217.1km)
<関東学生連合チーム成績>
往路 5時間30分15秒 15位相当
復路 5時間30分10秒 10位相当
総合 11時間00分25秒 14位相当
※オープン参加のため参考記録
■往路:107.5km
1区(21.3km) 中山 雄太(日本薬科大3年)1:01:41 区間7位相当
2区(23.1km) 並木 寧音(東京農業大2年)1:08:16 区間13位相当
3区(21.4km) 斎藤 俊輔(立教大4年) 1:03:47 区間16位相当
4区(20.9km) 村上 航大(上武大3年) 1:03:30 区間14位相当
5区(20.8km) 福谷 颯太(筑波大3年) 1:13:01 区間10位相当
■復路:109.6km
6区(20.8km) 鈴木 康也(麗澤大1年) 0:59:13 区間10位相当
7区(21.3km) 田島 公太郎(慶應義塾大1年)1:06:33 区間21位相当
8区(21.4km) 大野 陽人(大東文化大3年)1:06:09 区間13位相当
9区(23.1km) 竹井 祐貴(亜細亜大4年) 1:09:03 区間6位相当
10区(23.0km) 諸星 颯大(育英大3年) 1:09:12 区間5位相当