第97回関東学生陸上競技対校選手権大会(関東インカレ)は、5月24日~27日の4日間、神奈川県相模原市のギオンスタジアムで開催され、筑波大学の学生がハイレベルな戦いに挑んだ。
筑波大学の長距離選手が関東インカレに出場(参加標準記録突破)する人数も年々増えてきている。今年は、1500mに3名、5000mに2名、1万mに2名、3000mSCに2名、ハーフマラソンに3名をエントリーすることができた。
エントリー数からチームの成長は確認できるが、実力が通用し入賞したのは、小林航央(体育4)のみで、関東インカレの高い壁に跳ね返された格好だ。それでも、井の中の蛙になりがちなチーム活動の枠を飛び出してこそ掴める「他者との比較」の刺激を受けることができたことは収穫にはなる。多くの学生にとって、敗戦は糧になるし、糧にしなければならいと感じた関東インカレになった。
種目別にレースの内容と結果を報告させていただきます。
1500m1部 予選
昨年度、日本ランキングトップの記録(3分41秒81)をマークしている小林が優勝を狙って出場。予選3組で楽々トップ通過した。その他は、初出場となる相澤(理工学群3)と村上(体育4)が決勝進出を狙ったが、二人とも位置取りに失敗し、残念ながら予選落ちとなった。とくに、相澤は、ラスト3周(1200m)を3分2秒でカバーしており、レースに上手く対応していれば、と悔やまれる内容だった。
1500m1部 決勝
小林が優勝できるか!?注目の決勝は、生憎の強風。内側のレーンからのスタートとなった小林は、良い位置を取るためにスタートからスピードを出していったところ、先頭に押し出されてしまった。強風という気象条件が災いとなり、誰も前に出ない。結局、そのまま残り300mまで進みラストスパート合戦に。予想通り、東海大の舘澤選手との優勝争いとなったが、惜しくも敗れ、ゴール寸前で差されて3位に終わった。1200mまで先頭を引きながらも、ラスト1周(400m)を53秒でカバー。展開のあやでしかない僅差の負けは、非常に悔しい。
10000m1部 決勝
伸び盛りの相馬(体育2)が出場。池田(体育3)は、残念ながら怪我の影響で欠場。最初からわかっているとはいえ、暑さを考えるとかなりのハイペースの展開でレースは進んだ。相馬は、後方でどこまで粘れるか?という戦法を採らざるをえない。3000mからジワジワと離されて、途中は大きくペースダウンしてしまった。力不足でしかないが、最後の2000mで盛り返した走りは今後に繋がると評価したい。
10000m3部 決勝
大学院生が2部と走るのが3部のレース。駅伝常連校が多数出場する2部も、もちろんハイペース。吉成(D1)は後方寄りに位置してレースを進めたが、やはり3000m過ぎから離れ始めて、途中からはペース走のようになってしまった。本人も「ここまで崩れたのは久しぶりです。ただただ悔しいというか情けない気持ちしかありません」と。
3000mSC1部 予選
駅伝主将の川瀬(医学4)が、3度目の正直(3年連続出場)で決勝進出をかけて、予選1組に出場。超スローペースで始まったレースは、1000mを3分9秒で通過すると、徐々にスピードが上がっていった。2000m手前で急激にレースが動いた時も、川瀬は上手く対応した。3~4番手をキープし、5位で予選通過と思いきや、ラストが思うように伸びずにゴール寸前で抜かれて、痛恨の予選落ち。あと1歩のところで逃した決勝進出は、あまりにも非情な現実である。
2組目には、齋藤(体育3)が出場。1組目とは違いやや速めの平均ペースでレースは流れた。齋藤は落ち着いて走っていたが、後半のペースアップに付いていけずに予選敗退。春シーズンに入る前に足の故障が長引いた影響が大きかった。短期間で体力を戻して臨んだレースだったために、疲労が残っているような走りに見えた。実力を出す準備期間が不足してしまった感は否めない。
ハーフマラソン1部 決勝
暑さとタフなコース設定。厳しいレースになることは明白なハーフマラソンに、金丸(体育3)と西(体育2)、児玉(体育2)の3名が臨んだ。ハイペースで始まった2部とは対照的に、1部はスローな展開で始まったレースは、トラックを4周すると一転してハイペースに。このペース変化のパターンは選手たちをさらに苦しめる要因となったと考えられる。
そんな中、金丸は先頭集団の後方で流れに乗り、後半に集団から離れた後も粘りの走りを見せた。集団から離れた時点では27位だったが、ペースダウンを僅かな幅に抑えて、順位を徐々に押し上げ、最終的には19位でゴール。最近の調子からは十分に健闘したと言ってよく、暑さとロードへの対応力を十分に示した。
一方の西と児玉は、早々に集団から離れてしまった。故障で仕上がり不足の児玉は、これは致し方ないこと。意外だったのは、西が早期に集団から離脱したこと。練習からは好調さが窺い知れていただけに、チームの誰もが「まさか!」という思い。本人も首を傾げるように、ピーキングの問題なのか、暑さなのか、その原因は判然としない。モヤモヤした気持ちは残るが、次を見据えて進んでいくしかない。
5000m1部 決勝
小林が800mに回ったために、出場者は藤田(体育3)一人となった。暑さとハイペースという例年通りのレースに、藤田は2000mまでしか対応できなかった。タフなレースとは言え、急激にペースダウンしたレース内容からは、大会前から兆候があった貧血症状の影響が多分にあったのだろう。レースの後半は、走りに力強さを欠いていた。今大会を目標に厳しい練習を積んできたことが裏目に出たような結果になったのは残念である。
5000m3部 決勝
3部(大学院)は1万m同様に2部と走る。才記(M1)は、暑さとハイペースというタフなレースを果敢に攻める走りで先頭集団の前に位置した。非常に好調に見えたが、3000m手前からペースが落ち始め、途中からはJOGのようなペースに。意識が朦朧としたような状態になり、最後はゴールにたどり着くのがやっと、という状態。本人も「途中から何も覚えていない」ということから、熱中症に近い症状に陥ってしまったようで、残念な結果に終わった。
800m1部 決勝
小林は、最終日の800mでも5位に入賞する立派な戦い。1500mの予選・決勝、800mの予選・準決勝・決勝の5本をしっかり走り切った。
他で、実力を出せたのは、川瀬と相澤、金丸だけ。他は、総じて、惨敗に終わったと言っても間違いではないだろう。春から強化してきたスピード能力を発揮するためのスタミナが不足していたと分析する。狙ったレースの後に反省しても後の祭りだが、次に待ち受ける春の大目標である全日本大学駅伝・関東予選会に向けて、目を覚ます機会となったことだろう。“眠れる獅子の目覚め”となるのか? 6月30日の決戦に向けて、学生たちの奮起に期待したい。
-1500m 1部-
組 | 順位 | 氏名 | 記録 | 備考 |
---|---|---|---|---|
予1 | 12 | 村上 諄(4) | 3’56″96 | |
予2 | 5 | 相澤 拓実(3) | 3’52″15 | |
予3 | 1 | 小林 航央(4) | 3’47″59 | 決勝へ |
決勝 | 3 | 小林 航央(4) | 3’51″85 |
-5000m決勝 1部&3部-
部門 | 順位 | 氏名 | 記録 | 備考 |
---|---|---|---|---|
1部 | 32 | 藤田 黎士(3) | 15’23″95 | |
1部 | - | 小林 航央(4) | DNS | |
3部 | 2 | 才記 壮人(M2) | 15’22″40 |
-10000m決勝 1部&3部-
部門 | 順位 | 氏名 | 記録 | 備考 |
---|---|---|---|---|
1部 | 27 | 相馬 崇史(2) | 30’32″00 | |
1部 | - | 池田 親(3) | DNS | |
3部 | 1 | 吉成 祐人(D1) | 31’36″17 |
-ハーフマラソン 1部-
順位 | 氏名 | 記録 | 備考 |
---|---|---|---|
19 | 金丸 逸樹(3) | 1:07’00” | PB |
41 | 西 研人(2) | 1:10’09” | |
42 | 児玉 朋大(2) | 1:11’15” |
-3000mSC 1部-
組 | 順位 | 氏名 | 記録 | 備考 |
---|---|---|---|---|
予1 | 6 | 川瀬 宙夢(4) | 9’11″97 | |
予2 | 9 | 齋藤 零司(3) | 9’19″03 |
-800m 1部-
組 | 順位 | 氏名 | 記録 | 備考 |
---|---|---|---|---|
予2 | 1 | 小林 航央(4) | 1’51″78 | |
予3 | 7 | 野村 拓也(3) | 1’57″34 | |
予5 | 7 | 伊東 翔吾(2) | 2’00″53 | |
準決1 | 2 | 小林 航央(4) | 1’51″03 | |
決勝 | 5 | 小林 航央(4) | 1’49″46 |
-800m決勝 3部-
順位 | 氏名 | 記録 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | 登坂 健志(M2) | 1’49″74 | 大会新,PB |
3 | 三津家貴也(M1) | 1’51″78 | PB |