2018年3月23日に卒業式があり、4年生・大学院2年生が筑波大学を巣立っていった。企業に就職する者、大学院に進学する者、様々だが、文武両道を謳う筑波大学の学生がどんな卒業論文を投稿したのか、指導教員・本人の承諾を得た卒業論文(抄録)を卒業・修了後の進路と併せて紹介します。
↑中長距離ブロック送別会での記念撮影↑
【平成29年度 修了生】
<生命環境科学研究科(大学院・修士)>
吉成裕人(栃木県佐野日大高校 出身)
・専攻:生物化学
・進路:生命環境科学研究科 博士後期課程
・修士論文:交尾依存的な生殖幹細胞の増殖を制御する因子の解析
・卒業論文:生殖幹細胞の増殖を制御する因子の探索-ショウジョウバエを用いた解析-(学群4年次)
・発表した論文
1) Yuto Yoshinari*, Eisuke Imura*, Yuko Shimada-Niwa*, Ryusuke Niwa (*equal contribution). Protocols for Visualizing. Steroidogenic Organs and Their Interactive Organs with Immunostaining in the Fruit Fly Drosophila melanogaster. Journal of Visualized Experiments (JoVE) 122: e55519, 2017, (IF:1.232)
https://www.jove.com/video/55519/protocols-for-visualizing-steroidogenic-organs-their-interactive
2) Tomotsune Ameku, Yuto Yoshinari, Ruriko Fukuda, Ryusuke Niwa. Ovarian ecdysteroid biosynthesis and female germline stem cells. FLY doi:10.1080/19336934.2017.1291472, 2017,(IF:1.475)
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/19336934.2017.1291472?journalCode=kfly20
・主な受賞歴とステータス
1) Yuto Yoshinari, The 8th Daigoro Moriwaki Award, The 12th Japanese Drosophila Research Conference. Tokyo, Japan. September 9-11, 2016.
2) Yuto Yoshinari, 2nd Award in the 10th China-Japan-Korea Graduate Student Forum, The 10th China-Japan-Korea Graduate Student Forum. BEIJING, CHAINA. September 22-25, 2017.
3 )筑波大学生命環境学群学群長賞 2016年3月
4)筑波大学生命環境科学研究科研究科長賞2016年3月
5)筑波大学生命環境学群生物科学専攻専攻長賞2017年3月
6) 日本学術振興会特別研究員DC1・平成30~32年度
【平成29年度 卒業生】
<体育専門学群>
平賀大一(岩手県立花巻北高校 出身)
・専攻:運動生化学
・進路:筑波大学大学院 人間総合科学研究科
・卒業論文:負荷付き自発運動効果における脳内ドーパミン機構の役割~高い運動意欲の神経基盤を探る~
(卒論の説明)ラットに異なる負荷で輪回し自発運動を行わせると、高い仕事量 (運動におけるエネルギー発揮) と筋適応効果 (筋肥大) が発揮される運動負荷で、同時に運動意欲にかかわる前頭皮質におけるドーパミン代謝が最も高まる。よって、高い仕事量や筋適応効果の発揮には前頭皮質ドーパミン代謝が重要であることが示唆される。これらは、高い運動パフォーマンスやトレーニング効果の発揮には、運動の対する高い意欲 (モチベーション) が重要であり、それは適度な負荷の設定によって引き出されるという可能性を説明する。実際、私たちは、トレーニングや試合において、適切な負荷や課題の設定をすることで、意欲が高まり、高いパフォーマンスを発揮できるだろう。逆に、できそうにない高い負荷や課題を設定すると、意欲が湧かず、達成できないばかりか、故障のリスクも高まり、トレーニング効果を得ることができない。今後より詳細な検討が必要であるが、高いモチベーションで望むことが高いパフォーマンスを発揮することへつながるかもしれない。
・主な受賞歴とステータス
1)最優秀論文発表賞
2)体育専門学群長賞
3)功労賞(H29年度主事)@陸上競技部
中川凛(兵庫県立長田高校 出身)
・専攻:運動生化学
・進路:筑波大学大学院 人間総合科学研究科
・卒業論文:低酸素トレーニング効果を制限する慢性ストレス~毛髪コルチゾール測定からの検討~
(卒論の説明)長距離ランナーをはじめとする持久性アスリートにとって、酸素運搬能はパフォーマンスと密接な関係を持つ重要な要素である。その酸素運搬能の向上を目指し高地環境などで低酸素トレーニングをおこなうが、必ずしもその恩恵を受けられるわけではなく、効果に関しては一致した見解が得られていない。そこで酸素運搬能の向上を阻害する要因を探るべく、慢性ストレスに着目し、毛髪コルチゾール測定法を用いて研究をおこなった。
田沢俊介(神奈川県立横須賀高校 出身)
・専攻:スポーツバイオメカニクス
・進路:筑波大学大学院 人間総合科学研究科
・卒業論文:慣性センサを用いた走動作計測に関する研究 ~揺動成分に着目して~
(卒論の説明)近年スポーツ動作の即時的な計測, 分析手法の一つとして,慣性センサ(加速度センサ・ジャイロセンサ)が利用されています.慣性センサは従来の動作計測装置と比べ安価であることから,スポーツの指導現場などにおいて利用されることが期待されます.しかし,慣性センサは皮膚の表面に貼付される形で用いられるため,生体の軟組織により運動中に大きく揺動してしまう場合があります.このため,本来の動作とは異なる揺動情報をセンサが計測してしまう問題点があります.本研究では,ランニング中のセンサの揺動の特徴を明らかにし,今後のセンサ研究の知見を得ることができた.
柴田拓実(福岡県立糸島高校 出身)
・専攻:体育科教育学
・進路:筑波大学 大学院 教育研究科
・卒業論文:障がい者とスポーツ交流が高校生の障がい者理解やアダプテッド・スポーツの考え方に及ぼす影響
(卒論の説明)高校生が障がい者とスポーツ活動を通した交流をすることによって、自身のスポーツ活動に対する工夫を考えることができるようになるかを明らかにしようとした。普通校と特別支援学校の交流会で、普通校の高校生を対象に質問紙を用いて、「障がい者のイメージ」、「障がい者のスポーツ活動のイメージ」、「スポーツの工夫」についての調査を行った。
<理工学群>
永田拓也(和歌山県立桐蔭高校 出身)
・専攻:社会工学類・経営工学
・進路:筑波大学大学院 システム情報工学研究科 社会工学専攻
・卒業論文:ショッピングアプリ使用傾向による消費者の類型化
(卒論の説明)ショッピングアプリへのアクセス情報をもとに消費者の特徴をつかみ実際のマーケティング戦略につなげるための研究
<人間学群>
井口 謙(山口県立下関西高校 出身)
・専攻:人間学群・教育学
・進路:RKB毎日放送(株)アナウンス部
・卒業論文:高校時代の部活動における悩みと支援の検討~ 対処のプロセスとサポートニーズに着目して~
(卒論の説明)私は「部活動を指導し、生徒に大切な時間を残したい」という想いから教師を志しました。しかし教育学を学ぶにつれ、高校生が部活動に対して抱える悩みは実に多様で、大きなストレス源になり得ると感じました。そこで本研究では、高校時代部活動に対して何らかの悩みを抱えた経験のある方を対象に調査を行い、悩みへの対処の過程を調べ、有用な支援方法に関して知見を得ることを目的としています。
<人文・文化学群>
武田勇美(神奈川県立横須賀高校 出身)
・専攻:人文学類
・進路:株式会社スポーツニッポン新聞社
・卒業論文:アスリートを対象としたインタビューのディスコース分析
(卒論の説明)本稿では、スポーツ報道における中立性の在り方とドラマ的な工夫がどのように共存しているのかを語彙、表現から言語学的に考察し、これと並行して、ジェンダーによる言説の違いについても併せて論じる。
【平成28年度 卒業生】
<体育専門学群>
才記壮人(富山県立富山高校 出身)
・専攻:運動生化学
・進路:筑波大学大学院 人間総合科学研究科(H29年度から大学院)
・卒業論文:ビタミン B1誘導体の単回投与で高まる自発運動性 と脳内ドーパミン作機構同調生~マイクロダアリシス法を用いた検討 ~
(卒論の説明)これまでビタミンB1は、糖代謝の補酵素として働くことから肉体疲労軽減効果(ヒト)や持久性パフォーマンス向上効果(ラット)が検討されてきた。
我々の研究室では、このビタミンB1の誘導体(吸収性や組織移行性を改善したもの)の単回投与により、ラットの120分間の自発運動性とドーパミン代謝活性が高まることを明らかにしている。本研究では、ラットを自由行動下におきながらリアルタイムに脳内の神経伝達物質を測定できるマイクロダイアリシス法を用いることによって、ビタミンB1誘導体投与で高まる自発運動と同時に意欲に関わるとされる前頭皮質内のドーパミン放出が高まることを明らかにした。
ビタミンB1誘導体は意欲に関わるドーパミン神経を活性化させ、活動意欲を亢進させる効果が期待できる。