第256回日本体育大学長距離記録会は、4月22~23日の二日間で開催され、1500m~1万mの三種目に筑波大学の学生が、関東インカレを視野に各々の目的を持って出場した。自己ベストやセカンドベストを記録した者や練習の成果が出せなかった者と結果は様々であったが、「1500mにおいて小林航央(3)が3分46秒35の自己新記録をマークし、日本選手権の参加標準記録を突破したこと」「全日本大学駅伝予選会出場に向けて、1万mのチーム平均タイムを向上させられたこと」が嬉しいニュースである。
1500mには、4名出場。最初に走ったのが第14組目の村上。この組は、青山学院大学の選手が多数出場しており、良いペースでレースは進んだが、村上はスタート直後、他の選手の転倒に巻き込まれ位置取りを下げてしまったため、後方から順位を上げていく展開になってしまったところが痛かった。それでも、最後まで安定した走りで3位まで順位を押し上げて、自己新記録となる3分52秒63をマークした。
ただ、本人は関東インカレA標準記録(3分51秒50)を狙っていただけに、悔しい気持ちのほうが強いようだった。冬の故障で2ヶ月のブランクがありながら、短期間でここまで身体を戻しながら自己ベストを出したところには、成長を感じることができる。
次に登場したのは、第15組に出場した藤田。体調も良く、同じく狙うのは関東インカレA標準記録突破である。しかし、スタートで競り負けて位置取りは後方の内側。出るに出られず、やっと外側に出て前に進んだが、その先でまたもやポケットされ、山梨学院大の選手のスパートに絡むことができないという下手なレースをしてしまった。最後に猛然と追い込んだが、時すでに遅し。標準記録にも届かず、非常に勿体無いレースだった。悔しい内容だったが、本人は、力が付いていることが実感できたようで、インカレに向けて学内選考会で記録を突破したいと意気込みを高めていた。
第17組には、小林と三津家が出場。この組には、実業団所属の外国人選手がいて、ハイペースの展開が期待された。一周のペースが60~61秒とマズマズのペースで流れたが、小林には物足りないとばかりに、ラスト一周でスパート。最後の400mを58秒でカバーし、3分46秒35の記録を出してみせた。このタイムは、筑波大学歴代3位であり、日本選手権大会の参加標準記録も突破する価値あるもの。最終組で走ったら、3位45秒を切ったのではないかと思わせるほどの強い内容だった。
同じ組で走った三津家は、関東インカレA標準記録突破を考えて、慎重にペースを刻んでいった。課題のラストも最後まで脚は衰えずに、自己新記録をマークし、ギリギリではあったが、目標をクリアした。「今日は無難に走っただけなので、これからはハイペースでも持ちこたえられる走力を身につけたい」とインカレを見据えた力強い目で話していた。
1500mに出場した4名は、各々に自らの成長を感じることができたようで、笑顔を見せてくれたのが印象的だった(写真の4名)。
1万mに出場した3名は、距離が距離だけに、練習の状況がそのまま表れた格好だ。
第3組に出場した武田は、スローペースから5000mまで先頭を引っ張ることに。冬場の2ヶ月のブランクや就職活動の真っ最中であることから、自己新記録は望めないのわかっているために、「いつもと違う経験をしたい」と考えての“先頭の引っ張り”だったようだ。当然、後半のペースアップに対応する力は残っていなかったが、しぶとく粘り、練習として出場したレースの価値を自ら高めたことは、今後に繋がりそうだ。「インカレに向けて、練習の質と量を高めていかなければなりません」と語っていた。
第8組には、河野と大学院生の吉成が出場。予想よりもやや遅いペースで流れたが、二人には好都合な展開だったのかもしれない。5000mを14分47秒で通過すると、そこから二人の明暗は分かれていった。
良い感じで練習できている吉成は7000mまで対応し、7000m~9000mにかけて大きくペースダウンはしたが、自己ベストまで3秒と迫る29分52秒11でゴール。「今の練習状況で、このタイムが出せたことは自信になった。インカレまで追い込む練習がかなりできるので、6000~9000mのキツい場面に対応できる実力をつけて、6月には大幅なベストを出したい」と冷静な分析をしながら高い意欲を示した。
河野は、5000mの通過が1万mでは最速タイム。「余裕があるようで、身体が動かなくなった」と話す。2週間前の世田谷競技会の5000mと大差ないタイムで5000mを通過できたことに前進を感じることができたものの、後半の落ち込みにガックリと肩を落としていた。
それは、駅伝主将として、チームの大きな目標の一つに、全日本大学駅伝の予選会出場を掲げていることが理由としてある。記録会でのタイムが、チームの目標にとって重要な意味を持つからだ。吉成だけが資格記録を伸ばしたに過ぎないが、今日が終わって、筑波大学の上位8名の平均タイムは、29分57秒97と少し上昇した。あと平均7秒の記録短縮が必要と考えており、8人で56秒。まだまだ伸ばせそうな学生がいるので、可能性は大いにあるだろう。インカレと1万m記録向上という二つの課題に向かってチームは進んでいる。
二日目の5000mには、6名が出場。新入生3名とインカレで1500mを狙う3名が、それぞれ5000mの距離で持久系能力のチェックを目的として走った。
1年生の3人は、筑波大学のユニフォームを着用して走る最初のレースとなった。記念すべきレースを自己新で飾りたいところだったが、“可もなく不可もなく”といった走りになってしまった。
山下と渡辺は、レースの運び方は良かった。とくに、山下は、ラスト1000mでスパートする積極性も見せた(しかし、すぐに失速・・・)。思うほど記録が伸びなかったのは、この2週間、攻めた練習を消化してきた影響が少なからずあったようだ。「動きそうで動かない」と走りながら疲労のようなものを感じたようだ。今は、新しい環境に慣れながら、練習の強度も上げている段階である。次に目標とするレースに向けて、しっかり調整することができれば、かなりの記録短縮が期待できそうな二人の走りだった。
関東インカレで1500mを目標としている小林と藤田、池田は、それぞれが無難に走ったような感じ。持久系能力の現状チェックとして出場したわけだが、小林と藤田は及第点の内容だったと言えるだろう。残念だったのが、池田。練習での強さがまったく発揮できないレースとなり、本人も首を傾げる。練習では大将というより横綱クラス。自分をコントロールする能力を身につけなければならないだろうが、それは本人も十分にわかっていること。どこかで今後の飛躍のきっかけを掴んでもらいたい。
第26組では、1年生の相馬が関東インカレB標準記録(14分22秒0)突破を目指して力走した。練習では1年生とは思えない強さを発揮していたことから、難なく記録突破するだろうと見込んでいたが、ラスト1000mを3分01秒も要し、自己記録更新も目標達成もならなかった。3000mまでは良い感じで走れていたが、「2000mからのペースの上げ下げに対応するのが難しかった」と。
相馬は、この3週間で厳しい練習をこなしてきたために、走力の問題というよりも、疲労残りが主な原因だと考えていいだろう。4000mまでは大幅な自己新記録ペースであったわけで、可能性を大いに感じる走り。今後の活躍が楽しみである有望な1年生であることは間違いない。
<1500mの結果>
14組 | 3位 | 村上 諄 | 3’52″63 | PB |
15組 | 3位 | 藤田黎士 | 3’53”33 | |
17組 | 1位 | 小林航央 | 3’46”35 | PB |
7位 | 三津家貴也 | 3’51”38 | PB |
<5000mの結果>
19組 | 16位 | 山下和希 | 14’51”22 | |
20組 | 10位 | 渡辺珠生 | 14’51”60 | |
24組 | 7位 | 小林航央 | 14’27”93 | |
31位 | 藤田黎士 | 14’58”80 | ||
25組 | 33位 | 池田 親 | 15’29”54 | |
26組 | 29位 | 相馬崇史 | 14’34”37 |
<1万mの結果>
3組 | 10位 | 武田勇美 | 31’10”16 | |
8組 | 20位 | 吉成祐人 | 29’52”11 | |
28位 | 河野 誉 | 30’39”60 |