第96回関東学生陸上競技対校選手権大会は、5月25~28日の4日間に渡り神奈川県の日産スタジアムで開催され、筑波大学の学生が目標とする大舞台で勝負に挑んだ。中でも、男子1500mにおいて、小林航央(3)が3位の表彰台、森田佳祐(4)が4位に入賞する大健闘の力走を見せた。
毎年、初日に組まれる男子1500mは、筑波大学チーム全体の流れを作る大事な種目となる。とにく、関東インカレの1500mは、箱根駅伝の常連校もスピード強化して臨んでくるために、非常にレベルが高いことで知られるレース。毎年、予選から勝負しないと決勝に残ることができない厳しい戦いになるが、今年はさらにハイレベルの予選となった。
第1組目に登場したのが森田。スローペースに落ちた200m過ぎに先頭に立つ積極性は、ストライド走法の森田はラストの切れ味勝負では分が悪いという認識からである。それにしても、300mを49秒で通過した後の残り1200mを2分59秒でカバーするというパフォーマンスは予選としては圧巻。それでもギリギリの組1位というところが、レベルの高さを示している。
第2組目で予選通過を目指した三津家は、最初の400mを59秒で走る先頭の2番手で積極的な走りを見せる。しかし、スピード型の三津家は、持続力不足が露呈し、800mから徐々に遅れ始め、残念ながら予選落ちとなってしまった。4年で迎える最後の関東インカレで悲願の決勝進出はならず、悔しい結果となった。
第3組で走る小林は、表彰台を狙っており、予選落ちするわけにはいかない。スピード能力が高いので、引っ張る必要はないのだが、最初から先頭へ。最後は、優勝候補本命の舘澤が抜け出し、小林は2位争い。そこで僅かに敗れて4位となってしまったが、3分46秒という上位の記録で、プラスで拾われて決勝進出を果たした。
予選の3組ともが、ハイペースで展開されるのは、とても珍しいことだが、これも森田が作り出した空気(流れ)であろう。1組目と3組目で筑波大学勢がレースを支配できた上に、森田と小林がともに5000mの走力が高いことは、1日で2本のレースを考えると優位であり、決勝での上位入賞の期待が大きくなった。
そして迎えた決勝は、予選から約5時間後である。スタートの号砲とともに、明治大学の前田選手が先頭を引くがペースは上がらない。意を決した森田が残り600mで前に出てペースを上げた。小林も即時に反応し2番手へ。筑波大学の二人が先頭でラスト1周の鐘が鳴り響く。この走りに、スタンドの応援は最高潮となる。この時点で優勝争いは4人に絞られた。
大学の応援に後押しされて、森田は逃げ込みを図るが、ラスト150mで舘澤に切れ味鋭いスパートをされてしまった。それに続いたのが明治大学の保坂と小林。小林は、最後まで2位争いを繰り広げたが僅かに遅れ3位。森田は4位。目標としていた二人の表彰台は達成できなかったが、予選と決勝のレースで常に先頭を走った二人は、筑波大学の存在感を十分に示したと言っていいだろう。
悔しさはあるが、森田のタイムが、同日の予選・決勝ともに3分48秒台で、小林は、3分46秒と3分47秒である。大健闘という評価を与えられる。
その興奮冷めやらぬ中、男子3部(大学院)の1万mに吉成が出場。3部は2部と一緒のレースとなる。箱根駅伝で活躍する大学が揃う2部は、予想通りのハイペースとなった。後方を走る吉成でさえ、1000mが2分49秒、2000mが5分40秒の通過であった。気温も低くない中で、このペースは厳しいと言わざるをえない。最後まで粘りの走りは見せたが、7000~9000mのペースダウンが堪え、30分12秒でゴールした。しかし、自己記録からは24秒遅れは評価していいのではないだろうか。
二日目には、3000mSC予選が行われ、1組目で走るのは井口。2000mを6分8秒で通過したが、そこからペースダウンして13位の予選落ち。4年生にして初のインカレ代表は、実力も出せずに厳しいものがあったようだ。大舞台になるほど、経験が必要となってくることを教えられる。
昨年、僅かの差で決勝進出を逃した川瀬が2組目に登場。2000mを6分01秒で先頭集団にしっかりと付いて通過し、決勝進出&自己新記録を達成するのは間違いないと思われたが、ラストの詰めが甘く、9分05秒で8位となり、今年もあと少しのところで予選落ちとなったしまった。悔し涙を流す川瀬には、今後の奮起を期待したい。
最終日の9時に行われたハーフマラソンに出場したのは、4年の河野と武田。例年のごとく、今年もまた暑い。そのコンディションでも2部は超ハイペース。1部は、それより遅いと言っても、暑さを考慮すると十分に速いペースと言える。直前まで調子が上がらなかった二人は、自重ぎみにレースを進め、3km以降は、無理に先頭に付かずに、自分のペースを守って走ることになった。力を出し切ったという感じはしないが、調子を考えると致し方ない結果であったと言えるだろう。
長距離では最後の種目となる5000m。まず、男子3部に才記が出場。1万m同様に2部と一緒のレースとなる。出場人数も多いことから、必然的にハイペースとなった。才記の入りの400mが62秒で、1000m通過が2分42秒である。スピード能力が高い才記は、レース後に「速いとは感じなかった」と話すほど余裕はあったようたが、さすがに持続するのは無理であったと言わざるをえない。
それでも、3000mを8分28秒で通過しており、5000mのレースとしては自身最速の3000m通過タイムであったようだ。暑い中をバテバテになりながらも、大崩れせずに、14分25秒でゴールしたことは評価できる。
そして、男子1部の5000mには、1500mで入賞した森田と小林が出場するとあって、期待が高まった。当然のごとく、ペースは速く、400m毎のラップが65秒台の連続である。入賞を狙う森田は、集団の前のほうに位置してレースを進めた。
小林は、後方から順位を上げていく作戦をとったが、後ろであってもペースが速いことに変わりはない。楽に追走しているように見えたが、余力は確実に失われていった。
中間の距離を過ぎたあたりで、森田も小林も苦しくなり、最後は、かなりのペースダウンとなった。結果的に予想以上の凡走となってしまったが、3日前にハイレベルの1500mで予選と決勝の2本を全力で走り、力を出し切った疲労や暑いコンディション、そして、ハイペースの中で入賞を目指して走ったのだから、二人を責めることはできない。
毎年、一人しか出場できなかった5000mに、二人がA標準記録を突破して出場したこともチームの成長の証である。来年は、しっかりと戦うことを目標にしていきたい。
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