第257回の日本体育大学長距離競技会が6月3日に日体大・健志台キャンパス陸上競技場で開催され、筑波大学の学生が、全日本大学駅伝の予選会出場権をかけて、1万mの記録短縮に挑んだ。二人が29台の自己新記録をマークして合計55秒の短縮。チーム平均タイムを29分51秒に向上させ、2校を抜いて、19番目に押し上げた。エントリー締め切りの前日、後がないラストチャンスをものにした筑波大学は、14年振りに全日本大学駅伝予選会の舞台に立つことになった。
この日、日中は夏日となり、風も強い気象コンディションとなった。ただ、筑波大学の学生が出場する1万mの第7組は、スタートが18時30分ということが幸いし、気温はかなり下がってくれた。しかし、強風が収まる気配がないところは、まさしく逆風であった。
競技会前の筑波大学の上位8名の1万m平均タイムは29分57秒97で、全日本大学駅伝の予選会を目指す大学では21番目。20番目の東農大が29分53秒91であるから、一人あたり4秒以上(合計33秒ほど)の更新が必要な状況であった。ただし、この日に東農大が記録を短縮すると、さらに求められる記録が高まることになる。その記録に挑むのは、8名の学生。どの顔も緊張気味に映った。
<高素材の1年生・渡辺も必死に記録短縮を狙って走る>
第7組で出走するのは、村上(3)と池田(2)、渡辺(1)。入りの1周は遅かったが、そこからペースが上がり、強風の影響もあるかもしれないが、3000m過ぎに3名ともが先頭集団から離れるのは予想外であった。緊張なのか、それとも、関東インカレでの4日間の応援で、調整が思うようにできなかった影響が大きかったのか。3人が平凡なタイムに終わり、記録短縮は次の組に持ち越され、暗雲がたちこめる。
第8組には、関東インカレ1500mで3位になった小林(3)と期待の1年生・相馬が出走。幸運なことに、スタートと同時に風が弱まり、帝京大学の選手が良いペースで先頭を引っ張ってくれる。最初の1000mを2分55秒、5000mを14分52秒で通過しても、二人の表情に変化はない。29分台の期待が膨らむ。
<インカレ後で心身の疲労を抱えながら力走する小林>
8000m過ぎに先頭のペースが一気に上がると、小林の表情は歪み、相馬も先頭集団から少しずつ遅れ出す。小林も徐々に先頭から離れ、精神力でカバーする領域に入る。記録への執念、つまりは、「全日本の予選会の舞台へ行きたい気持ち」だけが二人を動かす原動力だ。「この二人で決めてくれ!」という仲間の想いが届いているかのように、ペースダウンを最小限に抑え、ラスト400mを小林は63秒、相馬は66秒でカバーし、二人ともに29分台でゴールした(小林=29分49秒25、相馬=29分56秒95)。
<歯を食いしばって力走する相馬(1)>
ゴールした二人に、仲間が集まり、歓喜の輪が作られ、1年生の相馬は、もみくちゃに。皆で目指してきた全日本の予選会出場が決まった瞬間は、至高の喜びを分かち合う若者の笑顔で溢れかえった。インカレで疲労した心身に鞭打って走った小林。インカレのサポートや応援に回り十分な調整過程を踏めなかった相馬。二人は、立派に走りきった。二人への祝福と労いには、当然ながら敬意が含まれるのだ。
<全日本の予選出場を決めた二人でガッツポーズ>
そんな興奮状態で、吉成と才記、森田のエース格3人が第9組に向かった。前の組のコンディションが一転して悪化。さらに強風が吹き荒れ出した。3000mまで引っ張った才記、滅多に緊張しない吉成の過緊張、インカレ後から体調が優れない森田の三人は風に苦しめられ、悶えながらも、最後まで気持ちを切らさずに走りきった。しかし、上級生として不甲斐ない走りとなったが、それは「ご愛嬌」と許せる雰囲気があったのは、前の組みで決めてくれたからに他ならない。
<ブロック長として体調の悪さを隠して力走する森田>
いや、学生たちの目が、すでに6月18日に向いているからなのかもしれない。
昨年から、「関東インカレで勝負すること」と「全日本大学駅伝の予選会に出場すること」をチームの目標に掲げてきた。とくに、後者の目標は、チームとして初めて目標を達成したものとなる。一人では成し遂げられない駅伝の目標をクリアできた喜び。初めて味わう格別の味覚は、チームをさらに成長させる苦くても甘い味わいになったような気がしてならない。
練習昨年の全日本大学駅伝大会の上位6校(青学大、早大、山梨学院大、駒大、中央学院大、東洋大)はシードとなり、関東地区予選会に参加する20校で9つの枠を争うことになります。タイムは、参加資格タイムの合計です。
1.日体大(3時間51分58秒44)
2.東海大(3時間52分17秒98)
3.神奈川大(3時間52分22秒28)
4.明大(3時間53分30秒70)
5.大東大(3時間53分49秒46)
6.順大(3時間54分5秒34)
7.中大(3時間54分99秒02)
8.国学院大(3時間54分30秒11)
9.東京国際大(3時間54分54秒37)
10.法大(3時間55分0秒14)
11.城西大(3時間55分1秒53)
12.帝京大(3時間55分19秒60)
13.拓大(3時間55分37秒48)
14.国士舘大(3時間55分59秒36)
15.創価大(3時間56分1秒74)
16.日大(3時間56分4秒61)
17.専大(3時間57分29秒34)
18.上武大(3時間58分34秒05)
19.筑波大(3時間58分48秒74)
20.亜大(3時間58分58秒37)