2024年10月19日に東京・立川にて、第101回東京箱根間往復大学駅伝競争予選会(箱根駅伝予選会)が開催されました。私たち筑波大学男子長距離ブロックは、「箱根駅伝復活プロジェクト」と掲げて活動するチームであることのプライドと気概をもって、またこれまで厳しい練習を乗り越えた12人のベストメンバーで臨むことによる自信をもって、今年の決戦に挑みました。ここでは、レースの詳細と結果について報告させていただきます。
(文責・3年寺田)
<例年にない過酷なコンディション>
試合当日、開催地である東京都立川市は、前日に降った雨の湿気を含みながら昇ってきた強い日差しを受け、スタート時刻が近づくほどに蒸し暑さを増し、まるでサウナのような事態と化していた。選手たちは高速レースとなった昨年の敗戦での反省から、今年一年はスピードに対応し前半から本選出場ラインとなる10位内の争いに加わることをテーマとして取り組んできた。だがこの天候になると高速レースではなく、いかに後半の失速を抑えるかが試されるサバイバルレースとなることが容易に予想された。チームは暑くなるという天気予報から、最終調整として「遮熱塗料」(ウェア類に塗り込むことで遮熱機能を発揮し、体温の上昇を抑えることにつながる)を用いるなど、できる対策を施して本番に備えた。
今年は、例年チームの課題であった故障による主力の欠場がなく、ベストメンバーで12人を揃えることができた。『古豪復活』、一年間掲げてきたチームスローガンを実現するためのレースが9時35分の号砲を合図に始まった。
<スタート~5km>
スタートともに総勢509人の選手が一斉に走り出す。筑波大学の選手は事前の戦略から自身がいるべきポジションを見つけ、集団の流れに乗る作戦だ。今季5000mと10000mで筑波大学記録を更新し、チームの絶対的なエースである金子佑太朗(工シス4)は日本人選手トップを目標とし、先頭カメラからでも確認できるポジションに位置づけた。塚田萌成(医学5)、古川幸治、吉田海渡(ともに体育4)、小山洋生(体育3)らも前方の集団に位置取った。
またそこから後方の位置に松浦海瑠(化学3)と川﨑颯(体育2)が、さらに一つ後ろの大集団に鈴木将矢(医学3)、堀口花道(体育3)、丸子晴樹(工シス3)、伊佐昂大(体育2)そして中村優太(体育1)が固まって5kmを通過した。
5kmの通過順位はボーダーライン上の10位。前後の大学とのタイム差はさほどなかったが、まずまずの滑り出しだった。
<5km~10km>
しかしこの日の徐々に強まる日差しが、日影が全くない駐屯地内を走る選手たちを苦しめる。5kmを通過してから日本人トップ集団で走っていた金子が表情を歪め、次第にポジションを落とし始めた。脱水の影響から攣ってしまったのだ。また同様にチームの主力である吉田も集団からこぼれ、後方の集団に吸収された。エースがまさかの事態に陥ったものの、10km通過の筑波大学の順位は13位。10位との差は28秒と、まだ予選突破のラインは見えていた。
<10km~15km>
例年にない過酷なコンディションにより、ほとんどの大学の選手はペースを維持することが難しくなる。市街地を走っていた選手たちは、小刻みな起伏が待ち受ける昭和記念公園内に入った。小山、塚田は暑さに苦しみながらも前を追う粘りを見せたが、選手の多くは順位を落とすこととなり15kmの通過順位は17位。この時点で10位との差は4分41秒にまで開き、予選突破の望みは薄くなった。
<15km~Finish>
レース終盤、既に限界に近づく選手たちに暑さと公園内の起伏はあまりにも厳しく、他大学では途中棄権となってしまう選手もいた。そのような状況でチームトップを走っていた小山は順位を落とすことなく、ラストは他大学のエースと競いながらゴールし、個人総合22位と見事な走りを見せた。去年のチームトップだった塚田もさすがの走りで個人総合で39位と、去年の自身の個人順位(68位)を上回った。チーム3番手には松浦が入った。シーズン前半から試合での爆発力を発揮し、本格的なハーフ出走は今回が初となったが、持ち前の勝負強さを見せてくれた。
その後も選手たちが1秒でも速いタイムを出そうと、最後の力を振り絞りフィニッシュラインに駆け込むが、既に10位内に入ることは現実的ではなくなっていた。過酷な戦いを終え、ふらつく足取りで陣地に戻る選手たち。厳しい表情を浮かべながら結果発表の時を待った。
結果発表では本選出場となる大学が続々と発表されていく。今年は暑さの影響で全体として昨年よりもタイムが大きく下がり、シード権争いは1秒で決するなど接戦となった。しかしながら筑波大学の名前はとうとうその場で呼ばれることはなく、予選敗退が決まった。正式結果は18位。10位との差は10分52秒。エース金子の思わぬアクシデントなど、力を発揮しきれなかった選手がいたことが悔やまれるものの、箱根駅伝の舞台はまだ手の届かぬところにあることが思い知らされる結果だった。
<箱根駅伝予選会を戦い終えて>
結果発表後、応援に駆けつけてくれた陸上競技部のメンバー、日頃からチームを支援・応援していただきこの日も選手に声援を送ってくださった方々を前に、選手ひとりひとりが結果報告を行なった。ある者は今回の結果に対する自身の責任と反省の意を述べ、ある者は悔しい気持ちを抑えきれず、またある者は来年へ向けて責任感ある言葉を口にした。
こうして今年の筑波大学の箱根駅伝への挑戦は幕を閉じた。希望あることは、今回チームトップとなった小山洋生が後日、関東学生連合のチームに選出されたこと、そして塚田、金子に続き今回で小山が示したように、他大学と引けを取らないエースへと成長する確かなメソッドをもつことである。
小山、2年連続でハーフでハイパフォーマンスを残した塚田、そして今季筑波大学記録を2種目で樹立した金子の3名は、高校時代の5000mの記録がそれぞれ14:51.71, 15:00.26, 15:03.46 である。高校時には他大学の主力選手と競える力はなくとも、大学時での練習によってそのような選手と肩を並べるまでに成長するノウハウがチームの武器である。
チームを支えてきた4年生が引退し、予選会に4度エントリーしたことで塚田の戦力も抜けることになるが、筑波の成長メソッドと「筑波大学を箱根駅伝に復活させる」というチーム理念は変わらぬことなく残っている。ましてや今回出走したか否かに関わらず、次のチームを作る1~3年の学生たちが胸に抱える「古豪復活」への想いは遥かに強いものとなっている。
再び箱根駅伝予選突破を目指す挑戦の1年が始まりましたが、「筑波大学箱根駅伝復活プロジェクト」への変わらぬ応援をよろしくお願いいたします。
<チーム成績>
筑波大学 18位 記録11:12:17
<個人成績>
順位 | 氏名 | 所属 | 記録 | 備考 |
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22 | 小山洋生 | 体育3 | 1:04:27 | |
39 | 塚田萌成 | 医学5 | 1:05:01 | |
109 | 松浦海瑠 | 化学3 | 1:05:57 | PB |
164 | 古川幸治 | 体育4 | 1:06:51 | |
173 | 川﨑颯 | 体育2 | 1:07:01 | |
189 | 鈴木将矢 | 医学3 | 1:07:13 | |
239 | 中村優太 | 体育1 | 1:08:01 | 初 |
263 | 丸子晴樹 | 工シス3 | 1:08:32 | |
309 | 堀口花道 | 体育3 | 1:09:27 | |
322 | 吉田海渡 | 体育4 | 1:09:47 | |
329 | 伊佐昂大 | 体育2 | 1:09:59 | 初 |
359 | 金子佑太朗 | 工シス4 | 1:10:45 |