関東学連10000m記録挑戦競技会は、11月25日(土)に慶應義塾大学・日吉キャンパス陸上競技場で開催され、筑波大学の学生が多数出場した。注目は、第94回箱根駅伝関東学生連合チームに選出されている相馬崇史(1年)が出走選手内定を射止めるか!であった。箱根出走メンバー入りをかけて、精一杯の走りを見せた。
過日、関東学生連合チームの出走選手は、箱根駅伝予選会と10000m記録挑戦競技会のタイムを合算して決定されることが発表された。予選会で69位となり、関東学生連合チームに5番手で選出されている相馬といえども、この日のタイム次第で逆転され、補欠に回る可能性もあるという選考ルールである。
相馬は、この1か月間、気を緩めることなく日々の練習に取り組んできた。この間、3000mと5000mでも自己記録を伸ばし、練習においても断トツの走力を示すようになっており、1万mで28分台を出せる手応えを掴めるまでに成長した。不安があるとすれば、練習で気負い(張り切り)過ぎたことによる疲労残り。事実、相馬自身も「調子はイマイチです・・・」とピーキング(調整)が上手くいかなかったことを認める状態での出場となった。
学生連合チームではあるが、桐の葉(筑波大伝統)のユニフォームが箱根路を疾走する内定をもらえるのか否か。筑波大学の関係者が固唾を飲んで見守る中、学生連合チームの選考を兼ねる第10組は、夕刻の16時45分に運命の号砲が鳴った。
第10組には、35名が出場。1000m通過が3分2秒というスローペースで始まった前半は、大人数の集団が瞬時に形を変えるほどの移動が伴う走りづらい展開になり、転倒するアクシデントに見舞われた者もいた。相馬は、そんな“ごった返す”集団を後方で眺めながら冷静にレースを進めていった。
レースの中盤からは東大の近藤選手をピタリとマークし、ペースが上がった後半にかけて、どんどん順位を上げていく。調子の悪さを微塵も感じさせない軽快なピッチ。このまま先頭争いを繰り広げると思われたが、8000mでいきなり先頭集団から離れだした。しかし、表情は苦しそうに見えない。やはり、調子を合わせられなかった影響があったのだろう。それでも、1周を72秒前後のペースで耐え、最後の400mを64秒でカバーして、大幅な自己新記録(29秒短縮の29分27秒77)を達成した。
関東学生連合チームに選出されている選手の中では5番目でのゴール。予選会の順位も5番目、合算したタイムでも5番目となり、レース後の会議で箱根駅伝出走メンバーとして内定を与えられた。
関東学生連合チーム内定者と記録
(予選会と1万m記録挑戦競技会の合算タイム)
1.近藤 秀一(東大3)1時間29分7秒71
2.長谷川 柊(専大2)1時間29分33秒15
3.中島 大就(明大2)1時間29分47秒76
4.金子 鷹(東農大3)1時間30分21秒41
5.相馬 崇史(筑波大1)1時間30分23秒77
6.田部 幹也(桜美林大3)1時間30分32秒26
7.溜池 勇太(日本薬大2)1時間30分41秒75
8.阿部 涼(日大2)1時間30分44秒52
9.根岸 祐太(慶大3)1時間30分49秒74
10.田崎 聖良(亜大2)1時間31分1秒41
レース後、相馬は「前半は集団の後方で余裕を持って走れ、ペースが上がった時に上手く前の集団につけたことで、無駄な力を使わずに走ることができました。今回はあまり調子が良くないと感じていましたが、ペースが遅かったこともあって、しっかりと動かすことを心掛け、レースに対応することができました。箱根駅伝出走の内定と関東インカレA標準記録を突破できたので、目標はほぼ達成できました。これから本番まで1ヶ月はあるので、一度冷静になり、一から土台を固め直していきたいと思います。たくさんの応援をありがとうございました」とコメントした。
<すでに引退した前・駅伝主将と副主将が応援に駆けつけた>
相馬は、予選会終了後からこの日まで休みなく走ってきた。本人が語るように、1ヶ月という期間を上手に使って、箱根駅伝に向けた強化とピーキングを成功させてほしい。オープン参加となる学生連合チームでの出場となるが、ロードに強い相馬には、幻の区間賞と言われる走りを期待したい。
筑波大学としては、この日は、相馬の走りに注目が集まったが、他の学生も3名が自己新記録をマークした。
第2組で走った大土手(1)が、自身で掲げた目標を上回る自己ベスト。走り込みがあまりできていない中で、30分37秒は、1年生としては及第点。本人も自信になったようだ。夏までは怪我(故障)が多かったが、9月からは練習が継続できるようになってきた。期待の1年生の躍進がここから始まる予感がある。
第7組で走った藤田(2)と川瀬(3)も自己新をマークした。ともに途中まで良い感じで走っていたが、後半にペースダウンしてしまったのは残念。二人とも7秒ほどの記録更新に留まり、大幅な記録短縮とはならなかった。目標の29分台に届かず悔しい気持ちが残る。
他の学生は、練習の出来具合のわりに、記録に繋がらないもどかしさがある。狙ったレースで実力を発揮する能力もまた走力の大切な要素。筑波大学の学生にとって、この要素の自己改革を成し遂げていくことが依然として課題となっている。重要なことは、そのもどかしさが悔しさとなっているか?である。悔しさの分量だけ、成長が見込めると考えて間違いないだろうから。悔しさを滲ませる学生の表情を見ると、もっともっと変わり(成長し)そうな気配は十分にある。今後の奮起に期待したい。
このように、チームとしては、今回の競技会と2週間前の日体大長距離記録会の内容や記録を含め、全体的に物足りなさが残るのは否めない。冷静に分析すると、予選会に向けて養成した持久力にスピードを加えてトラックの記録を伸ばそうという思惑が上手くいかなかった学生が多い。
「今後は、スピード練習のメリハリと足りなかった持久系練習を付加して、1万メートルでは今年最終戦となる松戸市陸上競技会に向かっていきたい。」と川瀬駅伝主将は話す。箱根駅伝出走が内定した相馬と切磋琢磨しながら、来年の全日本大学駅伝・予選会の出場を確実なものにするために、チームの全員が成長を遂げていくことを改めて誓う競技会となった。