第190回 松戸市陸上競技記録会は12月23日(日)に千葉県松戸市総合運動公園で開催され、24名の学群生と2名の大学院生が出場し、12名が自己新記録をマークした。箱根駅伝に関東学生連合チームで出場予定の相馬も調整の一環で走り、順調さを示した。
まず、川瀬(医学・4年)と渡辺(体育・2年)が、自身としては悲願となる1万mで初の29分台をマークしたことから触れたい。
川瀬は、過去に何度もトライして達成できなかった30分の壁をやっと打ち破った。5000mを14分53秒で通過すると、その後も3分ペースをキープして難なく30分切りを達成。「5000mまで、池田と相馬に引っ張られたのが大きかった」と話すが、このレースに向けての練習過程は、茨の道そのものであった。
というのも、医学生である川瀬は、箱根駅伝予選会後から病院での現場実習がずっと続いていたからだ。実習が始まるのは朝早いため、朝練習を5時から一人で実施し、病院ではずっと立ったまま。実習が終わるのが夜の19時過ぎになることも多い。疲労困憊の実習後に、真っ暗なグランドに向かい、一人で練習する日が何度もあった。
皆と練習できるのは休日のみ。この状況で目標とする記録を突破するのは、並大抵のことではなかったはず。この状況での目標達成は、彼の記録に対する執念に他ならない。「人は高い志を持って努力すれば、苦難を乗り越えられる」ことを教えてくれる。
さらに驚いたのは、川瀬と同組で走った渡辺の粘走。4000mで先頭集団から離れ一人になりながらも、1キロ3分ペースを少し超えるところで維持し、ラスト1周を64秒でカバー。最後は「30分を突破する」という気持ちが彼を動かしたのだろう。春の怪我による長期離脱で、今シーズンは大きく出遅れたが、箱根駅伝予選会にギリギリ間に合わせ、予選会後も5000mと1万mでそれぞれ自己新をマークしてきた。
それだけでも、渡辺の素質の高さが窺い知れるわけだが、今回の一気の52秒短縮には、正直、誰もが驚かされた。それは、春だけでなはなく、秋も順調に練習を積んできたとは言えないからである。そんな状況での大幅な記録短縮に「渡辺は相当なポテンシャルを秘めていること」をチームの皆があらためて認識することになった。
今回29分台をマークした二人は、チーム内での練習における走力は、客観的に評価して中堅クラス。その二人が29分台をマークしたことは非常に価値が高い。チームの底上げがなされていることを証明するからだが、一方で、「上位の選手は何をしているのか?」という不甲斐なさから目を背けてもいけない。
実際に、29分40秒以内の自己ベストを狙っていた学生は多かった。何人もの学生が練習での強さを増しており、川瀬と渡辺との比較から言っても、29分40秒という目標を達成する可能性がある学生は複数いるのは事実。気持ちが空回りした感は否めない(=「練習の増量」をテーマにしていることが裏目に出た可能性はある)。何を言っても全ての事実(結果)が実力であるから、まだまだ精進と工夫が足りないということと受け止めなければならない。
川瀬と渡辺は、本番(本番に向けても)での集中力と心身のコントロール力(パフォーマンス発揮能力)が高いことが示唆される。他の学生は、練習が足りないのではなく、各要素(体力や調子)のかみ合わせができていないという分析が成り立つだろう。これらのことをチーム内で共有し、議論することでチームと個は、もっと成長できるはずだ。
こういう作業が上手くできると、チームの存在意義は高まるが、松戸市記録会に向けて皆で頑張ってきただけに、上位陣の結果が出なかったのは非常に残念ではある。
そして、もう一つの注目すべきが、正月の箱根駅伝に関東学生連合チームで出場予定の相馬(体育・2年)が調整練習として1万mを走ったこと(=1キロ3分のペース走)。8000mから少しづつペースを落としてしまったものの、ほぼ予定通りの走りを見せた。
本人は物足りない表情をしていたが、貧血から復調している段階で厳しい練習も積んでいる状態としては及第点だろう。この日に好調である必要はなく、ピーキングを考えると、むしろ疲労がある状態が好ましいと言える。ここからしっかりと調整していってもらいたい。
他に1万mに出場した学生をピックアップすると、この秋に「基礎からやり直し」と決意して、基礎トレーニングを徹底的に積んできた尾原(生命環境・2年)が、30分43秒をマークしたのも驚かされた。実践らしい練習は数えるほどしか消化してこなかったにもかかわらず、先日の日体大長距離記録会5000m自己新に続いて、この日も約40秒の自己記録更新。尾原のポテンシャルも相当だと思えてくる。
杉山(体育・1年)は、充実した練習を積んで、この日は29分台が期待された。疲労が残っていたようで目標には届かなかったが、確実に自己記録を更新した。5000m通過時点では余裕があったようだが、前半の速い入りを警戒し過ぎた感がある。単独走になってしまった後半、前を追う展開に自ら自滅したようなレースになってしまった。少しもったいないレースだった気がする。
また、5000mでは、初めて14分台をマークした山口(医学・2年)は31秒もの自己記録更新。今年の飛躍を記録で証明してみせた。
2年振りに自己ベストをマークした伊藤(体育・1年)も、練習での強さをやっと記録に結びつけた。ともに、レース後に安堵と自己新を喜ぶ表情を浮かべていた。
他では、急激な伸びを見せている1年生の薮下(社会国際・1年)と深澤陸(人間・1年)ら1年生の自己ベストも嬉しい結果。まだまだ伸びしろを感じる二人が、来春に14分台へ突入することは間違いないと思われる。
こうして、2018年の締めくくりとなった記録会を終えた。テスト期間真っ只中で出場したために、各学生とも苦しい調整となったようだが、皆、集中してレースに臨んでいた。
箱根駅伝に出場予定の相馬以外の全員が自己ベストを更新することを目標に掲げた記録会で、目標達成率は約50%だった。この足りない50%があるからこそ、チームは飛躍への課題を見出せるはず。そんな前向きな課題を得て、チームは明るさを増し、新年を迎えることができるような気がしている。
さあ、いよいよ年明け早々に、12年振りに筑波大のユニフォーム(桐の葉)が箱根路を踊る。その役目を担う相馬には、元気に走り切ってもらいたい。新年に相馬が力強い第一歩を箱根路で踏み出し、悲願の箱根駅伝に向けてチームに勢いを与えてほしい。応援よろしくお願い致します(区間発表は12月29日です)
松戸市陸上競技記録会
1万mの結果
組 | 順位 | 氏名 | 学群・学年 | 記録 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 11 | 植田 | 理工・3 | 31’40″69 | PB |
16 | 小川 | M 1 | 32’02″75 | ||
19 | 寺澤 | 理工・3 | 32’32″02 | PB | |
2 | 9 | 川瀬 | 医学・4 | 29’54″50 | PB |
10 | 渡辺 | 体育・2 | 29’55″63 | PB | |
15 | 相馬 | 体育・2 | 30’13″12 | ||
16 | 池田 | 体育・3 | 30’23″12 | ||
17 | 杉山 | 体育・1 | 30’27″30 | PB | |
26 | 猿橋 | 理工・2 | 31’21″52 | ||
31 | 藤田 | 体育・3 | 32’33″84 | ||
3 | 10 | 西 | 体育・2 | 30’25″31 | |
15 | 尾原 | 生命・2 | 30’43″57 | PB | |
22 | 田中 | 体育・1 | 31’47″21 | PB |
5000mの結果
組 | 順位 | 氏名 | 学群・学年 | 記録 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
6 | 9 | 小林 | M1 | 15’48″84 | PB |
8 | 19 | 岡島 | 人文・1 | 15’42″28 | |
23 | 不二 | 人間・1 | 15’55″19 | ||
9 | 4 | 薮下 | 社学・1 | 15’08″05 | PB |
11 | 深澤 | 人間・1 | 15’18″31 | PB | |
11 | 4 | 山口 | 医学・2 | 14’44″50 | PB |
7 | 伊藤 | 体育・1 | 14’46″67 | PB | |
18 | 重山 | 体育・2 | 15’11″81 | ||
21 | 田川 | 医学・2 | 15’15″33 | ||
23 | 山下 | 体育・2 | 15’18″22 | ||
28 | 赤星 | 理工・3 | 15’38″21 | ||
29 | 薛 | 体育・3 | 15’50″74 | ||
12 | 21 | 相澤 | 理工・3 | 14’57″85 |