第87回日本学生陸上競技対校選手権大会(通称:日本インカレ)は、9月6~9日の4日間、神奈川県等々力陸上競技場で開催され、各大学の代表選手による熱戦が繰り広げられた。
◎男子1500m
昨年度日本ランキングトップの小林航央(4)と才記壮人(M2)、三津家貴也(M1)の3名が出場。
<予選1組> 三津家 5位 3分52秒93
三津家は、スタートから良い位置を取りにいったところ、先頭に押し出される不本意な展開になってしまった。ペースを落としても前に出る者はなく、結局、勝負所の1200mまで先頭を引っ張るかたちに。ラスト勝負でも食い下がったが、決勝進出ラインから僅かに遅れる5位でゴール。ペースも遅かったためにプラスの6名にも入れず、無念の予選落ちとなってしまった。今季の好調さから決勝進出が期待されたが、不運な展開に悔しさが残る。
<予選2組> 小林 5位 3分49秒75
昨年度日本ランキングトップの小林だが、6月に発症した肉離れが完治せず、練習を再開できたのが今大会の10日前。さすがの小林でも、厳しい戦いが予想された。それでも、終始良い位置でレースを進め、最後のスパート争いにも加わったが、練習不足が響き、5位でゴール。3分49秒というタイムに、プラスの6人に入ることが期待されたが、3組目がハイペースで流れたために、残念ながら予選落ちになった。
たった10日間の練習で3分49秒は驚異的だが、本人にとっては最後のインカレであり、このようなかたちで終わったことは、非常に悔しい結果だったであろう。
<予選3組> 才記 2位 3分45秒28 PB
この組には、舘澤選手(東海大)と田母神選手(中央大)などの強豪が揃った。その二人がレースを先導するハイペースの展開に、才記は難なく対応し、ラスト勝負でも舘澤選手にピタリと付いて集団から抜け出し、予選から自己ベストを更新する3分45秒28をマークしての予選通過。余裕たっぷりのレース振りに、決勝での快走が期待できる走りだった。
<決 勝> 才記 2位 3分46秒42
スタートから木村選手(東海大)が果敢に飛ばし、最初の400mを58秒で通過。途中、ペースが落ちたことで集団はそれなりに形成され続けたが、途中から先日のアジア大会日本代表の舘澤選手が主導権を握る展開は、実力者でないと勝負にならない非常に厳しいレースとなった。
その中でも才記は余力十分にレースを進め、舘澤選手をターゲットに勝負所で前に上がると、ラスト200mで猛然とスパート。必死に食い下がる舘澤選手を完全に引き離し、その差は、セーフティーリードにまで広がった。そのまま優勝する!と誰もが思ったはずだが、ゴールまで残り40mという地点から急に脚が鈍り、残り10mで再逆転されてしまった。僅か0.14秒差で大魚を逃した悔しさもあるが、アジア大会帰りでも勝ち切る舘澤選手の強さに脱帽するしかない。
日本インカレに挑戦すること4度目。その4回の順位が「7位→5位→予選落ち→2位」。成績が示す通り「コツコツと努力を重ねながら順位を上げ、最後の日本インカレで表彰台に上る」という有終の美は感動的である。学生にとっても、大いに刺激になったに違いない。
レース後、才記は「終始余裕があり、どこで仕掛けようかと考えながら走っていました。残りの200mでスパートしたのは、後ろの選手に外から被されないためです。舘澤君と一騎打ちになっていたことを知っていたら、仕掛けを遅らせたのですが・・・。でも、舘澤君の戦意を早めに喪失させることを狙っての残り200mからのスパートだったので、悔いはありません。最後までスピードを持続できなかった力不足ですから、言い訳はしません。桐の葉のユニフォームを着てのラストランで、力を出し切れて、しかも、表彰台に上がれたので、素直に嬉しいです。応援ありがとうございました!」と語った。
◎3000mSC決勝
予選を組3位(8分58秒33)で通過した才記が、「1500m予選」「1500m決勝」「3000mSC予選」に続いて、4日連続のレースとなった決勝で上位入賞を目指して力走した。
予選、決勝ともに酷暑コンディションとなり、連戦で消耗度が大きい才記には不利であると言え、さらに、塩尻選手(順大)が引っ張る速い流れが、消耗をさらに高めてしまったことは否めない。2000m(5分55秒で通過)までは入賞圏内にいたが、残り2周で失速し、9分07秒06の11位に終わった。
2種目の予選決勝に1日ずつ出場した4連戦は、さすがに厳しかったようだ。どちらかというと1500mに標準を合わせていたこともあって、持久力の養成不足からは、この結果はやむを得ないだろう。
4レースで応援団(学生)を魅了してくれた才記には、労いの言葉を贈りたい。1500mで華麗に走る才記先輩、3000mSCで最後まで力を振り絞って走る才記先輩、どちらの走りも後輩たちは目に焼き付けたに違いない。
◎男子800m
薄田健太郎(2)と登坂健志(M2)、三津家の3名が出場。
<決勝>
薄田 5位 1分54秒81
登坂 6位 1分55秒85
(三津家 準決勝敗退)
3人が予選を通過、準決勝を薄田と登坂が突破し、見事ファイナルに進んだ。大物感漂う薄田に、今季好調の登坂。共に上位入賞の期待が膨らんだ。レースは、入りの400mが61秒という超スローペースで流れた。二人とも長く脚を使えるタイプだけに、嫌な展開になったが、薄田は1周目のホームストレートで先頭に取り付き、虎視眈々と上位を狙って、勝負の2周目に突入。
しかし、薄田はバックストレートで内側に入り(入らされ?)集団のポケットに囲まれるかたちに。登坂は後手を踏んで集団の後方の位置。どちらも、身動きが取れず、自身の持ち味であるロングスパートを仕掛けることができなかったことが悔やまれる。瞬発力の勝負となった残り200mから懸命に身体を動かすも、スローな流れでは、そこから届くわけがなく、目標とする表彰台(3位)争いには加わることができずに最後の直線に向かうことに。
薄田が5位、登坂が6位。W入賞を果たしても、満足することはできない悔しい結果となった。ただ、薄田は、まだ2年生。来年は優勝争いをしてくれるはずで、大いに期待が膨らむ結果だったと評価したい。登坂は、最後の日本インカレを入賞という成績で締めくくったのは、まさに気持ちの表れ。後輩たちが、その意志を引き継いでいくことだろう。登坂にも労いの言葉を贈りたい!
競技部としては、女子が総合優勝し、男子は総合3位。男子は、久しぶりに上位入賞を果たした。この勢いを追い風に、長距離パートは、箱根駅伝予選会への最終強化に向かっていきたい。