第49回 全日本大学駅伝 関東学連推薦校 選考会 は、6月18日(日)に埼玉県の浦和駒場陸上競技場で開催され、前年の全日本大学駅伝で6位に入賞したシード校6校を除いた20校が出場。9つの推薦枠を目指して、各校の代表8人が4組(各組に各大学から2名)に分かれて1万mで競い合った。合計タイムで順位が決定される方式で、14年振りに出場した筑波大学は、才記と吉成、池田の3名が自己ベストをマークしたものの合計4時間02分10秒48にとどまり、総合18位となった。
筑波大学が14年振りに挑む全日本大学駅伝の予選会。学生はもちろんのこと、コーチにとっても初めての舞台である。「どう戦うのか?」まったくの手探りになるはずだったが、実は、昨年の予選会を主力メンバーが観戦していたのだ。つまりは、1年前からこの舞台に立つことを学生たちは意識していたことになる。馳せた想いが、1年かけて現実のものとなった念願の舞台で、筑波大生は精一杯の走りを見せた。
◆第1組(小林 PB=29’49”25 / 池田 PB=30’42”73)
午後から雨が降り始め、気温も25度前後で微風。昨年とは違い、この時期としては「天候に恵まれた」と言ってよいだろう。速いタイムでの決着が予想される。最初で勢いをつけたい各校は、1組目には、実力があって安定感のある選手を配する傾向にある。ペースは、キロ3分前後で推移し、先頭集団は大きな固まりのまま淡々と流れていく。中間点過ぎから、ペースの変動が始まると、離れ出す選手が少しずつ出始めた。
意外なことに、そこで小林が遅れ出した。2週間前に自己ベストを出し勢いがあると思われた小林が早い段階で離れることは、まったくの予想外。いきなり筑波大学に黄色信号が灯ったが、もう一人の池田の表情はまったく変わらない。先頭集団についていく姿は力感に溢れ、「組でトップになるのでは」というくらい最後までしっかりとした走りを継続させた。後半の5000mを14分46秒でカバーして自己ベストを56秒更新する29分49秒でゴール。この緊張の舞台で大幅な記録更新は立派である。小林は、離れてからもカラダを動かそうと必死に走ったが、自己記録から約1分遅れとなる30分47秒も要し、二人合わせてのロケットスタートを切ることはできなかった。1組目が終わって総合13位。チームとしては、予想を下回る滑り出しとなった。(1組目終了=総合13位)
◆第2組(河野 PB=29’59”17 / 武田 PB=30’05”21)
2組目は、順天堂大学の選手がスタートと同時に飛び出し、牽制しあう第2集団をグングンと引き離す展開に。誰もが先頭を引きたくない気持ちから、1周あたりのラップが75~76秒で落ち着いてしまう。5000mの通過が15分30秒まで落ちると、さすがにこのままではいけないと、そこから1周が69~70秒と上がり始めた。河野は、このペース変化に対応し、離れた後半も駅伝主将として渾身のラストスパートを利かせる及第点の走りを見せた。武田は7000m手前から離れズルズルと下がり、平凡な走りとなった。スローペースの集団の外側で動き過ぎたことが最後に響いた。もう少し冷静さが欲しかった。(2組目終了=総合13位)
◆第3組(吉成 PB=29’48”18 / 相馬 PB=29’56”95)
準エースが登場する第3組からは、2組目までを終えた各校の状況で、ペース配分や狙う記録など目論みが出てくる。大幅な記録アップを狙い他校を引き離したい拓殖大の選手がハイペースで引っ張る展開となった。吉成と相馬は、速い展開から後方で様子を伺う作戦。吉成は淡々と体力を温存するように走っていたが、相馬は4000m過ぎで離れ始める。
吉成は、第2集団の後方で最後まで粘り、自己記録を更新する29分44秒91をマークし、大学院生として、この予選会にかけてきた強い気持ちを結果に表してみせた。集団の外側を動き過ぎたとはいえ、調子が良かった相馬が早い段階で集団から脱落することはまったくの想定外。プレッシャーの仕業なのか、相馬は2週間前のタイムから1分近くも遅れてゴール。実力の半分も出せていないことは明白だが、これも実力と受け入れるしかない。(3組目終了=総合17位)
◆第4組(森田 PB=29’26”11 / 才記 PB=29’35”82)
勝負が決する最終組には、満を持して各校のエースが登場。豪華な顔ぶれがスタートラインに並ぶ。当然、筑波大二人の持ちタイムも下位になる。ハイペース必死のために、二人は後方から省エネ作戦(を採るしかない)。後方の位置を走る二人でさえも、1周のラップタイムが68秒台の連続。インカレに向けてスピード強化に取り組んできた森田は、持久力不足から3000m過ぎで早くも苦しくなり、徐々に遅れ出す。あとは、粘り通すだけの走りになってしまった。
才記は、3番目の集団あたりで上手く対応し、5000mを14分25秒で通過。28分台も見えるペースだったが、終盤にペースを落として、大台には届かなかった。しかし、自己記録を20秒以上も更新する29分13秒68をマークして、ハイレベルな最終組で19位に入ったのは立派であろう。1万mの練習をあまり積んでいない中で、この記録を出せることにはただただ驚くばかりだ。(4組目終了=18位)
2週間前の日本体育大学長距離記録会で最後のチャンスをものにして出場枠に滑り込んだ歓喜の瞬間から、あっという間に2週間が過ぎ去り、この日を迎えた。2週間でできることと言えば、強化ではなく、調子を整えることくらい。この日の結果は、2週間前と逆になった。29分台を出して、本予選会に出場を決めてくれた二人が凡走に終わり、逆に2週間前に、タイムを出せなかった3人が自己記録を更新するパフォーマンスを見せた。皮肉な現実である。
関東インカレで1500mで上位入賞した森田と小林は、2週間前も1万mに強行出場しており、本予選会で戦える体力は、もはや残っていなかった。インカレでハーフマラソンに出場した二人(河野と武田)も同様。しかも、河野は教育実習期間中に宮崎から前日に戻ってきての参戦である。本大会に向けて、しっかりと練習を積んでピークを合わせることができたのは、結局は数人しかいないということだ。
つまりは、3週間前に関東インカレにピークを持っていき、且つ、2週間前に、本予選会の出場権を得るために記録会にピークを持っていった者は、結果、今回のパフォーマンスは下がったことになる。
逆に、関東インカレはトレーニングの一環で3部に出場し、この日に標準を合わせてきた才記と吉成、そして、関東インカレに出場せずに、2週間前の記録会でも平凡な走りに終わった池田の3名が自己新記録をマークしている。冷静に分析すると、当たり前のことが結果として表れているとわかる。
上記の分析をすると、今回の結果は、実力が足りないということではなく、この春のどの大会にピークを合わせたのか?本予選会が、狙う大会の優先度では何番目なのか?という問いに対する答えが評価に関係してくると考えられる。
本予選会の戦い方を知った筑波大学は、アプローチの仕方を学んだ。来年に向けては、早めに出場権を確保し、しっかり準備していきたい。もちろん目指すのは、予選突破となる。それも可能と肌で感じることもできた。
最後に、特筆の嬉しいニュースを挙げておきたい。練習では横綱と言われるくらい強い池田が、やっと実力を発揮できたことである。トラック競技だがチーム戦という責任がのしかかる独特の競技会で「大器が花開くのではないか」というチームの期待通りに好走した池田。これからの本領発揮がひじょうに楽しみになった。
14年振りに立ったステージで見た“もの”は、チームにとっても、個人にとっても、さらなる躍進を約束する大きな糧となったと言えるだろう。