男子駅伝監督の弘山です。今夏3回目の近況報告をさせていただきます。
箱根駅伝予選会まで1ヶ月半を切りました。昨日(9月3日)、この夏3回目となる合宿が終了しました。場所は、菅平高原。期間は、1週間と短めに設定しました。これが、トレーナー帯同なしのギリギリの線だと思います。
合宿を終えての感想としては、さらにレベルを上げた強化期として、段階を経てチームが強くなっていることを実感できました。今回の合宿では、ロードの実践練習を重視してトレーニングプログラムを組みました。私が計画を立てるわけですが、自分でも厳しい練習だなと思います。昨年までは、「練習量を如何に確保するか」というテーマでチームの底上げを図ってきましたが、チームと個が成長した今、その段階からレベルアップした練習を課しています。
2年生以上の学生は、昨年までの豊富な練習量から身体も鍛えられており、今年のメニューを消化する準備はできていると思います。しかし、1年生は話が別です。初めて体験することばかり。練習に付いていくだけで精一杯でしょう。でも、今年の1年生は強いです。必至に喰らいつき、「予選会のメンバーに入り、チームに貢献したい」という強い気持ちが随所に表れています。
ロードの実践練習をして面白いのが、トラックとは別人のようなパフォーマンスを見せる学生がいるところ。これは、ランニングフォームとの関連性が最も大きいのですが、それにしても、明らかにパフォーマンスに違いがあります。2年生の金丸と1年生の相馬、児玉がそれに当てはまります。とくに相馬は、“水を得た魚”のようにスイスイと走ります。上り坂の強さは圧巻で、特筆ものです。「箱根の山登りをさせたら面白いだろうな」と皆でそう話しています。
集団で練習する場合、誰が引っ張るのか?という問題が出てきます。誰もが、最後まで先頭集団で走りたいですし、できればトップでゴールしたいと思うわけで、「引っ張りたくない」という当然の心情が生まれます。今年のチームは、その嫌な役目を河野・駅伝主将や武田・駅伝副主将ら4年生たち自らが買って出ます。苦しい場面で先頭を引っ張るのですから、不利なのは当たり前で、練習の終盤は下級生が上位を占めることも多々あります。
それが普通に良いチームだと思います。上級生が後ろに付いて、トップでゴールするようなチームが駅伝で勝てるわけがありません。ここまでは、これでいいでしょう。でも、これからは、さらに1段階進めて、実力がある者が前を引っ張り、練習のレベルをさらに引き上げ、チーム全体の成長をもっともっと促すことを求めていく必要があると感じます。まあ、今のチームならば、指示しなくとも、自らそうするでしょうが。
疲労困憊状態で迎えた昨日の変化走でも、Aチームが最後のフリーペースになる時点で10人が集団にいました。さすがにフリーではバラけますが、それでも1位と10位で30秒程度の差に収まっています。疲労で動かない状態でも崩れないチームに成長できていることを感じると同時に、エース森田が、日本インカレの調整に入っており、合宿不参加ということを考えると、これは満足できるチーム状況(選手層)にあると思っています。
学生の目は、“箱根駅伝予選会というただ一点”を見つめて、必至に走っています。その集中した姿を見ると楽しみになってきます。ただ、学生にも伝えていますが、「俺たちは所詮、井の中の蛙。チームで練習している以上、どこまで強くなっているかは誰にもわからない」状態です。ただ、それを判断(評価)することは、今である必要はありません。まだ、強化に使える期間は1ヶ月もあるのですから、今は、絶対値を上げる努力を続けていくのみです。
そうは言っても、絶対評価をすることは可能です。チーム内での過去の練習と比較すればいいわけですから。当たり前ですが、それよりも高いレベルの練習ができています。しかし、レベルが上がると過去と同じ練習は減りますし、比較するための練習をしても仕方ないので、あまりしませんが(手法としては有り)。
この状況を作っているのも、やはり、多くの方々に支えられているからです。8月26日~27日に全国高校選抜陸上大会が大阪で開催され、私も行ってきました。そこに、山口や兵庫から大学陸上競技部の同級生がわざわざ私を励ましに来てくれて、夜に会食しました。資金難のことを話すと、「俺も協力してやるよ」と支援を約束してくれました。(額は言えませんが)その約束の資金で、アミノ酸系と栄養ゼリーを大量に購入して合宿に臨むことができました。その栄養面の補助効果が合宿の練習に表れたことは間違いないと思っています。
予選会の通過タイムを10時間15分とした場合に、このレベルに到達するのは容易ではありません。実業団チーム並の練習が必要になってくると思います。そこでの課題は、練習の強度が高くなっていくのに、サポート体制が貧弱で、回復が間に合わないところです。今回の合宿も、資金不足からトレーナー帯同が不可能でした。未だに、何ヶ月も同じシューズを履き、中には、穴が空いているシューズを履いている学生がいます。それも予選会のメンバーに入りそうな学生が複数。練習しているだけでトレーニング効果が得られないどころか、スポーツ障害を引き起こす事態に陥ります。見ていて心が痛みます。
今回、クラウドファンディングで支援をお願いしているのは、こういう状況を打破したいからです。いろいろと言われています。「“お金を使って箱根を目指す”=それじゃ他校と何も変わらないじゃないか」と。でも、文武両道を志し、必至に箱根駅伝を目指して頑張っている学生を助けてほしいのです。箱根駅伝に対する強い想い、練習量が他校の学生と同じなのに、環境・設備で走力に差が開いていくことが見ていて辛い。非常に高い競技レベルが求められる現代の箱根駅伝は、資金がどうしても必要なのです。それは、故障を恐れていたら、予選会突破は絶対に不可能なレベルだからです。お金を使わないで、たくさん練習もしないで箱根駅伝に出場する魔法を私は知りません。
ただ、筑波大学は、箱根駅伝に出場することで成し遂げたい目標がいろいろとあります。志の高い人材を集め、競技と研究に励み、「競技スポーツやスポーツ社会に貢献すること」や「優秀な人材に育て上げ、世に還元すること」など、その他諸々。そうした目標を達成するためには、志の高い人材が必要であり、箱根駅伝がモンスターコンテンツになった今、その出場が必要不可欠になってしまったのです。狭い視野で活動していないことをご理解いただき、頑張る学生と貧しいチームへのご支援をよろしくお願い致します。
クラウドファンディング終了まで、残りあと5日。ご協力ください。恥も外聞もなく、私からお願い申し上げます。