駅伝監督の弘山です。今年2回目の強化合宿の途中ですが、私からチーム状況のレポートをさせていただきます。
早いもので、箱根駅伝予選会まであと2ヶ月となりました。“あっという間”に時が過ぎているような気がします。予選突破できるチームに強化しているわけですが、この時の流れと競走しているかのような気分になります。限られた時間の中で、個とチームをどう仕上げていくか、私の手腕が問われることになります。
今年の予選会から従来の20kmという競走距離がハーフマラソンに延長されます。学生が獲得しなければならない体力レベルが益々引き上がることになります。「この1kmの差は大きい」との声も聞こえてきますが、私は、あまり気にしていません。20kmの距離を高いスピードで走破するには、走力を決定する“たくさんの体力要素や身体機能”を強化しなければならないからです。この1km余のタイムに加点できる要素は何かと問われたときに、その答えは様々。百者百様でしょう。
距離だけを意識してはダメですし、かといって、意識しないわけにはいかない。どういう強化を施していくか?どういう強化の経路を進んでいくと、その先に、訪れる結果がどう変わるのか?難題というよりも、推理や謎解き、いや、ルートマップ(ルート=経路の考案)に近い作業になる気がします。
目的地を箱根駅伝予選会とした場合に、どのルートを通っていくのか?時間がたっぷりあれば、多くの選択肢から経路を選ぶことができます。仮に、全日本大学駅伝予選会という山道を乗り越えていれば、比較的ゆとりのあるルートを選べたかもしれません。しかし、残り2ヶ月となった今、我がチームが選ぶことができるルートはそう多くはないということです。遠回りはできず、険しい峠を何度も何度も越えていけなければならないと思います。
この峠は、言うまでもなく強化合宿。すでに1回目の合宿(福島県白河甲子高原)を終え、現在、2回目の合宿(岩手県北上市)に入っています。全員が最初の峠を越えられたわけではなく、2回目の峠を上り始めることができない学生もいます。それでも、「一緒に上らなきゃだめだ」と手を引っ張っていくしかないのです。箱根駅伝の難しさは、全ての峠を乗り越える学生を14人も作らなければいけないところにあります。
筑波大学が通るルートは非常に厳しい山岳道かもしれません。何故?このルートを通らなければいけないのか。それは、まだまだ実力が足りないからに他なりません。だから、険しいルートになるわけですが、この過酷な道を通る覚悟と意欲があり、且つ、その道を通る意味を学生自身が理解していないと絶対に制覇できないルートです。迂回したり、立ち止まって休んだりしたら期限内に目的地に到達できません。
目標とする大きな大会を目指すにあたっては、この作業の連続です。ルート選択の理由、峠を越える意味、それらを学生と常に共有することが求められます。さらには、「迂回しない」「立ち止まらない」高い意欲と強い意志を醸成しながら進んでいく必要があります。
私が常に意識していることがあります。それは、学生の意志に反して「ルートを強要しないこと」「峠を無理に超えさせるようなことはしないこと」です。進む気がない者、越える気がない者の尻を叩いて進ませても挫折するのがオチです。進む・越える過程で“得るもの”は少ないと思います。だから、処方する練習メニューも一方通行(トップダウン)にはしていません。
ただ、現在の筑波大生は、私が強要するまでもなく、険しいルートを自ら選択するようになっています。手を取り合い、皆で厳しい峠を乗り越えようとしています。私は、それを傍らで補佐するのみ。石を踏んで捻挫していないか、転んでないか、崖から落ちそうになっていないか、をチェックして手を差し伸べる程度です。
まだ、14人が足並みを揃えて2回目の峠を越えられる状況ではありませんが、必死に頑張る学生を見ていると、3回目、4回目の峠を迎える頃には、きっと14人が隊列を作って進んでいけそうな気がしています。
それも、ただの隊列では駄目なのです。グイグイと先を上る選手の背中を追いかけ、背中が見える位置で我慢、または、その背中に近づくような状況になるかどうか。つまりは、「レベルの高い隊列を縦長に伸びないように作ることができるか」にかかっています。
今は、2回目の峠をまだ下から見上げている段階。縦長で乱れがちな隊列を少しでも凝縮するように峠の頂点へ上っていけるか。私の導きも責任重大です。全員が今回の峠を無事に乗り越えて、2回目の峠の頂で3回目の峠が見えるようにしたいと思います。
少し比喩した文章になってしまいましたが、そこはご容赦ください。
最後になりましたが、第1回目の合宿(峠)が終了した時点で、クラウドファンディングが成立しました。このことも学生たちの背中を力強く押してくれています。本当にありがたく心より御礼を申し上げる次第です。さらに、クラウドファンディングでは第二目標を掲げていますが、多くの方に伴走者になっていただきいという想いがあります。峠を越えようと頑張っている学生を沿道で励ましていただければ幸いです。
時が流れる速度に負けないように、自分たちで決めたルートを進んでいきたいと思います。応援よろしくお願い致します。
第3弾クラウドファンディングも第二目標を掲げ実施しています。引き続きご支援をよろしくお願い致します。
▷筑波大学箱根駅伝復活プロジェクト
第3弾 クラウドファンディング
https://readyfor.jp/projects/TsukubaUniv-HakoneEkiden