今夏、第2回目の強化合宿が8月10日~23日で実施されています。約2週間のロングランです。
今回は、「福島県の白河甲子高原」→「岩手県北上市水神温泉」と移動しての2箇所です。この場所を選んだのは、白河甲子高原では青少年自然の家を利用することで安価な合宿が可能になり、北上市は合宿誘致助成金が支給されるからです。比較的涼しい土地であること、学生の費用負担が減らせることが合宿地選定の理由に尽きます。
だからと言って、練習環境が悪いわけではありません。どちらの場所も満足できる合宿地です。そのあたりは抜かりなく!です。
前回、報告させていただいた通り、1回目の走り込みは、合宿組と強化練習組に分かれて実施しましたが、今回から全員が集う合宿になっています。参加できなかった学生は、故障中の3名とインターンシップの実習日程が合宿と重なった猿橋(理工学群3年)のみです。例年に比べて、参加率はとても高いと思います。
箱根駅伝予選会に向けた1回目の本格的な強化練習は、走り込みのための走り込みという位置づけでしたが、2回目の強化練習(合宿)から厳しい練習を課しています。どの学生もへこたれることなく、元気に黙々と厳しい練習に立ち向かっていると思います。
こうして厳しい練習を消化できるのも、アスレティックトレーナーの合宿帯同やシューズ交換率のアップ、アイシングの徹底、超短波治療器などのセルフケアグッズの利用によってスポーツ障害を発症するリスクが減っているからです。クラウドファンディングによるご支援(ご寄附)に助けられていることが非常に大きいのです。学生たちもその有難みを心から感じながら、今年こそは!と頑張っています。
筑波大学は選手層が厚いわけではありませんが、現在は、チーム内の競争が激化している気がします。「良き友であり、良きライバルでもある」という関係性が築かれつつあると感じます。
例年通り、8月までは全員が平等に合宿する機会が与えられますが、9月からは箱根駅伝予選会を想定したメンバーだけが参加できる合宿に移行します。そのメンバー争いが熱くなっているのです。
当確者は8人程度でしょうか。次位が7人、3番手グループが10人ほどいます。次位以下の17人が、当確選手以外に最終合宿へと残る8~10人の座を奪い合うことになります。私が駅伝監督に就任してからは最も熾烈な争いになっていると思います。
その証拠に、第1次走り込みまでは、次位以下の学生は怪我のリスクを考慮して練習量を適度に調整していました。しかし、この第2次走り込み(合宿)では、予選会の選手を目指している学生は練習量を減らすという申し出をしてきません。それをしたら選ばれないと自覚しているからです。
次位以下の選手に1年生が7人も含まれています。この選手争いに1年生が加わる状況は、指導する立場としては難しい判断を迫られる場面が多々あります。例えば、「1年生の将来性を潰さないか」という疑念を抱くことが挙げられます。
「私が大学1年生の時は、もっともっと走っていたなぁ」と思うのですが、そういう観点で評価や判断を下すことはナンセンスです。我々の時代とは、幼少期から育った環境が違い過ぎるからです。昔の人は、幼少期は外遊びが多く、丈夫なカラダを手に入れていましたから。
そんなことを考えている指導者の立場と学生の立場は違います。チーム内は今や戦場です。1日1日が真剣勝負です。努力を怠った者が負ける世界で、学生たちは箱根駅伝の予選会に向かっています。そこで得られることは計り知れないほど大きなものだと思います。必ずや、今後の競技にプラスになるはずです。
言っておきますが、学生たちは「自分が予選会に出場したいから」という理由だけで、“選手争いという戦場”に立っているわけでは決してありません。今のメンバーで切磋琢磨して互いに高め合い、チーム力を引き上げて箱根駅伝予選会で互角に戦いたい!という思いの競技活動。つまり、リンカーンの言葉を借りれば『同志の同志による同志のための自己研鑽』を皆で協力しながら実行している状態だと思います。
そんなことが見て取れる練習が、この合宿中にありました。14kmの上り坂タイムトライアルを実施した際のこと。学生からの提案で、走力順に4つのグループに分け、時差スタートする方法を採りました。しかも、グループの縦割りでのチームを組んで合計タイムを競う連帯競技方式にしたのです。
まず目指すのは、同時スタートするグループでトップを取ること。次に、前から落ちてくる同じチームの学生がいたら、叱咤激励すること。最後に目指すのは、チームのために1秒でも早くゴールすることです。心が折れそうになる厳しい練習を最後まで集中して走る方法としては最適。良く考えたものです。
というように、1回の練習をどれだけ真剣に取り組めるか、そして、1回1回の真剣な練習をどれだけ積み重ねることができるか、という意識を持ち、創意工夫をしていることの表れだと思います。
嘉納治五郎先生の言葉『自他共栄』『精力善用』があります。筑波大学・長距離チームの学生は、その教えを実践していると言ったら、「君たちまだまだ努力が足りない」と嘉納先生に怒られるかもしれませんね。
でも、間違いなく、この精神で学生たちは箱根駅伝予選会を見据えて進んでいると思います。
最後に、クラウドファンディングも残り10日となりました。
→ https://readyfor.jp/projects/TsukubaUnivHakoneEkiden
国立大の挑戦をご理解いただき、頑張る学生たちの伴走者として共に歩んでいただければ、学生たちも更に頑張れると思います。引き続き、ご支援と応援をよろしくお願い申し上げます。