箱根駅伝予選会に向けて「近況レポートVOL.4」
筑波大学男子駅伝監督 弘山 勉
今夏第3回目となる強化合宿(走り込み)を9月2日~11日(9泊10日)の期間、熊本県で実施しました。9月からは、いよいよ走り込みの質を高める時期に突入するので、「日本マラソンの父」と呼ばれた金栗四三(敬称略)の生まれ故郷である熊本県で、箱根駅伝予選会に向けて練習強度を高めることにしました。
熊本県を合宿地に選んだ理由は、
①筑波大学と熊本県、玉名市、和水町、南関町とでスポーツ等を通じた地域経済の活性化に関する連携協定を締結したこと(2018年12月)
②NHK大河ドラマ『いだてん』の主人公の一人である金栗四三がクローズアップされていること
③本学が出場を目指している箱根駅伝は、金栗四三が創設に尽力したこと
④熊本県は金栗四三の生まれ故郷であること
などが挙げられます。
昨年の連携協定締結以来、熊本県や玉名市の方々から本学の箱根駅伝復活プロジェクトに対して ご支援いただくことが増え、その気運の高まりとともに合宿誘致の話が持ち上がり、今回の9泊10日の合宿に至りました。この合宿は、熊本県と玉名市からのご支援やサポートなくして実現しなかったことは間違いなく、感謝の気持ちで一杯です。
最初に訪れたのは玉名市(金栗四三の住家)。期間は、9月2日~5日の3泊4日と短期間となりましたが、充実した合宿となりました。玉名市に到着するなり市役所で大歓迎を受け、市長から歓迎と激励の言葉、激励の品を頂戴し、合宿がスタートしました。マスコミ(テレビカメラ)の取材まで入り、学生たちにとっては初めてのことばかり。貴重な経験をさせてもらいました。
その後、練習に移動してからもテレビ中継が入り、合宿3日目の小さな峠を越えるロード走(玉名市~南関町)では、南関町の役所の方々がわざわざ応援に駆けつけてくれました。
練習以外の空き時間もフル活動。学生たちは、金栗四三の住家訪問とお墓参り、大河ドラマ館の見学、金栗四三ミュージアム見学、生家訪問など、金栗四三という偉大な先輩の生い立ちや成長過程、その後の活躍を知ることができ、歴史を学ぶとともに金栗四三のスポーツに対する情熱と愛情を肌で感じることができたと思います。
金栗四三の熱い志に触れ、箱根駅伝に対する気持ちの昂ぶりを覚えたまま水上村に移動し、さらに厳しいトレーニングを敢行しました。
標高1000m近くあるクロスカントリーコースやトラック、市房ダム周回コース、市房山登山道など、バリエーション豊かな練習環境で思う存分に走り込むことができました。怪我人をほとんど出すことなく合宿生活を続ける学生たちを見ていると「さらに一つ高い集中モードに入ってきたな」と感じます。
大学での実習や集中講義で合宿に参加できなかった学生を含めると、24人で14人の箱根駅伝予選会エントリー選手を争っている状況になっています。筑波大学では、この競争率はもちろん過去最高で、今まででは考えられないこと(他大学はもっとハイレベルでしょうが)。この混戦模様を作り出しているのは、紛れもなく伸び盛りの1・2年生です。
杉山(体育2)と山本(理工2)はAグループで安定したパフォーマンスを発揮するようになり、Bグループに属してはいるものの、薮下(社会国際2)や深澤陸(人間2)が上り坂走や持久走でAグループを負かして上位に食い込み、岩佐(体育1)や小林(体育1)、永山(体育1)、坂見(体育1)も距離走や変化走で上位の順位でゴールする場面も多く見られるようになってきました。
それに負けじと、金丸(体育4)や相馬(体育3)、猿橋(理工3)らがトップを譲ることなく、上級生としての意地を示します。Aグループで常に練習する7人以外は、誰がエントリー選手に選ばれても不思議ではない状況になりつつあります。
私が望む「下克上とも言える選手争いがチームに活気を与え、チームの競技力をどんどん高めていく」という状況が益々濃いものになっているのは、もう確実です。しかも、予選会まで1ヶ月半という期間を残していることに活路を見い出すことができると思っています。
トレーニング以外でも社会貢献(交流)活動をさせていただきました。水上村岩野小学校の4~6年生を対象に陸上教室の講師を学生が務めました。
教員を目指す学生も多くいますから、講師は当然ながら学生たちです。これも社会勉強であり経験になります。「楽しく!速く!」をテーマに、企画から進行までを学生だけで担いました。
岩野小学校では運動会前ということで練習に精を出している丁度良いタイミングだったことも重なり、子供たちは学生たちの声に耳を傾け、一生懸命に走ってくれました。
陸上教室はたいへん盛り上がり、児童も講師である学生も終始笑顔が溢れ、「楽しんでいるのは、大学生のほうでは!?」と思えるほどでした。大成功だったのではないでしょうか。
今日(9月12日)から4日間、日本インカレが開催され、川瀬(医学5)が3000mSCに出場します。その他の長距離チームの学生は、全員が応援に回ります。陸上競技部を全力で応援しながら、疲弊した筋腱や骨を一旦休め、次に予定されている第4次強化合宿に移行し、思い通りの強化が積んでいけるようにしたいと思います。
最後に、第4弾クラウドファンディングは、8月30日をもって無事に成立することができました。ご支援いただいた方々に心より御礼を申し上げます。また、今回の熊本合宿では、茗渓会熊本支部から激励金をいただき、その他にも多くの方々から激励の品を頂戴しました。こうして多くの皆様に支えられて私たちは活動できているのです。本当にありがとうございます。
学生たちは、ご支援くださる皆様への感謝の想いを胸に厳しい練習に立ち向かっています。箱根駅伝予選会まで残り1か月半、悲願達成に向けて精一杯の練習を続けていきますので、引き続きご支援と応援をよろしくお願い致します。