10区(23.0km) 1時間12分5秒 区間16位
児玉朋大(体育専門学群3年 / 熊本・千原台高校出身)
第96回東京箱根間往復大学駅伝競走大会におきまして、第10区を走らせていただきました児玉朋大(こだま ともき)です。筑波大学が箱根駅伝という大舞台に立てたのは、日頃からの多大なるご支援と温かい応援をいただいているからです。心より御礼申し上げます。
箱根駅伝を走らせていただいたことで、僕には様々な思いが込み上げています。思い返せば、幼稚園児の頃から箱根駅伝に憧れを抱いていました。その舞台で走れることになり、今までに経験したことのない大きな喜びを感じていました。
当日はウォーミングアップの時から、「筑波大学がんばれ!」「応援しているよ!」と多くの方々に声をかけていただきました。スタート前に中継所で身体を動かしている時も、多くの人が、大学など関係なく筑波大学を応援してくれます。誰もが箱根駅伝を楽しみにしていることが感じられ、心が躍るような気分になりました。
ウォーミングアップから待機所に戻ったときには8区が終わる頃でした。その時は襷がつながるかどうかという状況で、川瀬さんにしっかりと襷が繋がった時は安心しました。前日の移動の時に、川瀬さんまでは必ず繋ごうと6区の岩佐、7区の杉山、8区の伊藤と話していたからです。
その後は、時間(レース)が進むほど繰り上げになることが確実になっていく中で、待つことしかできない自分がもどかしく、少し寂しい気持ちでテレビ中継を観ていました。そして、1位が襷をつないでからは他大学がどんどん中継所へ入っていきました。
先頭が通過して15分経ったあたりで、繰り上げ用の襷が渡されました。何とも言えない思いで受け取り、スタート地点へ移動しました。その時に、沿道の方々から、「諦めるな、大丈夫」といった声をかけていただき、闘志を持ち直すことができました。
繰り上げが迫る中でスタート位置に着きました。後ろを振り返っても川瀬さんの姿は見えず、スタートの合図が鳴りました。そこからは、「過去から現在、そして未来へと繋がる襷リレーの一部を俺は担っているんだ」という気持ちで集中して走ることができました。
そういう気持ちになれたのは、前日の夜に同期の大土手(駅伝主将)からLINEで「児玉の襷は来年に必ず繋がるから。伝統の黄色い襷を力強く持ち帰ってきてくれ。ゴールで待っている!」と連絡がきていたからです。それだけを考えて、チームメイトと関係者、応援者が待つゴールを目指して走りました。
走っている最中は、沿道から絶えることのない声援が聞こえ、とても力になりました。僕がアンカー(締め役)なので、ゴールすれば僕たちの戦いは終わります。でも今回は、筑波大学の途切れた歴史を結び直す26年振りの戦いです。僕の一歩は過去の栄光を未来へと繋ぐ一歩になる、と気づかされました。
その想いを胸に箱根路を一歩一歩踏みしめながら駆けました。残り3kmからは更に応援が増え、「全員が筑波大学を応援してくれている」のではないかと思えるほどでした。
大歓声に包まれて走る夢の舞台は、感動の連続でした。ゴールが近づくにつれ、「来年も必ず戻ってくるぞ」という決意めいた感情が自然と湧いてきました。「皆さんありがとうございます!」という感謝の気持ちでいっぱいになり、思わず襷を握りしめました。その伝統の黄色い襷の重みを感じながら、大手町のゴールに飛び込みました。
ゴールしてから味わうことができた充実感も半端ないものでした。周囲にいる全ての方々に「お疲れ様」と声をかけられ、花道のような通路を進んだ先には、一緒に頑張ってきた仲間がいて、僕の名前を叫びながら迎えてくれました。「万感の思いとは、こういう気持ちなのか」と初めての体験に身震いするほどの喜びを感じました。
自分の力は十分には発揮できませんでしたが、このメンバーで箱根路を駆けられたことは一生の宝です。襷を受け取れなかったことが心残りで、箱根駅伝は甘くないことを痛感させられる結果にはなりましたが、この経験が必ず僕たちを強くしてくれると思っています。
僕たちの挑戦に賛同いただき協力してくださった方々への恩返し、箱根駅伝で味わった悔しさを晴らすこと、それらは箱根駅伝でしか返せません。「必ず来年も箱根駅伝に舞台に戻ってきます」と皆で誓いました。
箱根駅伝が終わって、結果報告会兼関係者交流会を開催していただき、僕たち長距離パートの部員が参加しました。そこには、過去、箱根駅伝を走った先輩方、陸上競技部のOBOG、ご支援者の皆様に出席いただきました。
筑波大学関係からは、学長・副学長をはじめ、支援チーム(多くの組織から成る)の教職員、陸上競技部の先生方、茗渓会、校友会の皆様が出席され、さらには、学生の保護者の皆様も加わった会になりました。
僕たちは「こんなにも多くの皆様に支えられているのか」を知る機会となりました。箱根駅伝出場は僕たちの力だけでは決して成し遂げることができなかったことです。そう考えた場合に、今回の箱根駅伝出場が『チームつくば』をより強固なものにするはずの今後は、とても心強くなります。
あらためて感じるのは「箱根駅伝は、人と想いを繋げる素晴らしいスポーツイベント」であるということ。『つなぐ』という言葉を調べると「繋」「係」「絆」「系」「維」などの漢字が出てきます。全ての漢字が箱根駅伝に置き換えることができると思います。
「襷と想いを繋ぎ、関係を築き、絆を深め、組織の連携を図り、伝統や栄光を維持する」=“僕たちの務め”は、非常に意義深いものであることを、箱根駅伝100周年の節目にこの舞台に帰ってきたたからこそ知ることができました。
これまで多くのご支援・ご声援をいただきました方々、現地に足を運んで応援してくださった方々、テレビの前で応援してくださった皆様には感謝の気持ちしかありません。本当にありがとうございました。