【近況報告】第95回箱根駅伝予選会に向けて
(男子駅伝監督 弘山)
箱根駅伝予選会まで3週間を切りました。必死に夏季鍛錬をこなしていたら、あっという間に、この時期が来てしまった感じがします。
先週末で、全ての鍛錬(走り込み)を終えました。今までは、とにかく力を蓄える練習をひたすら やり遂げる日々。学生は、練習をこなすだけでも大変だったと思います。よく耐えてくれました。
評価できるのは、以前に“強化を進める上でポイント”となる点として書いた通り、走力上位の部員が少ない中で、故障(怪我)による離脱者をほとんど出さなかったところです。当然、小さな怪我はありますが、長期離脱という観点では、ごく少数に留まりました。これは、学生たちの努力の賜物だと思います。
少数派のチームで難しいのが、練習強度(量や質)の設定です。この点は、毎年、頭を悩ませるところです。我がチームは、練習のレベルを年々向上させなければなりません。弱かったのですから、当たり前のことです。ただ、昨年あたりから、練習の水準が引き上がり、練習のタイムにも、それなりに“こだわり”を持って臨めるようになってきたと思います。
予選会を通る水準とチームとして求める水準をどこに置くのかで、練習の出来栄えは変わります。現状を鑑みて「練習の水準をどこに持っていくか」は、とても難しい判断になります。
例えば、箱根駅伝予選会を突破しているチームには、それぞれの練習に基準というか水準があると思います。しかし、現代の箱根駅伝予選の突破経験がない我々は、依然として挑戦者の身でしかなく、その基準がないところがウィークポイントとして挙げられます。ですから、前年の比較でしかチームレベルを推し量ることができません。
では、その前年からの比較で言うとどうなのか?
前年や一昨年に比べて、かなり挑戦した練習ができたと思います。挑戦ですから、選抜メンバー(第3・第4次合宿)全員がこなせた練習など、ほとんどありません。できたら予選会突破に青信号が灯るレベルでしょう。でも、「出来た!」「出来なかった・・」を繰り返しながら、学生自身(チーム)の水準は引き上がってきたと感じます。
8月の合宿終了時点では、チーム全体として走力が著しく向上していたと思います。それは、基礎鍛錬である第2の峠(2次合宿)までのこと。その後、練習の水準を引き上げたことで、崩れる練習(崩れる者)が増えてきたような気がします。でも、そこを目指さない限りは、永遠に予選突破は見込めませんから、学生も水準を引き上げようと必死に頑張ったと思います。
しかも、私の方針として、高い頻度も求めましたから、疲労の蓄積は当然のこととして学生の身体を痛めつけたはずです。さらには、第3・第4の峠(合宿)は、標高1200m以上ある準高地で実施したのですから、なおさらです。苦しいばかりで、ほとんどの学生が自分の実力も調子もわからないまま、強化練習期間を終えたかもしれません。仮に、そうだとしても当然の結果で、調子を上げる暇もなかったと思います。でも、それでいいのです。ここからが勝負なのですから。
いよいよ予選会本番を見据えた平地での実践練習が始まります。持久力という貯金を使い(確認し)ながら、スピード持続力の味付けを施していく段階です。「俺、力付いたかも!」という反応が出現し、「俺たち、やれそうじゃないか!?」という雰囲気が出来上がるように、最後の調整を抜かりなく進めていきたいと思います。
レースに向けての調整では、練習量が落ちることで「疲労の除去」「酸化ストレスの低減」「血液性状の回復」が期待できます。その上で、学生自身の感覚と努力で完成させたいのが「スタミナが低下する代わりにスピード持続能力が高まる=ランニングフォームや出力ポイント」「食事コントロールと質の高いトレーニングで最高のカラダを作る」ことです。
幸いなことに、現在、本学の研究室(先生方)や大学院修了生が代表を務める協会などの協力を得て、定期的に様々なデータを取得して、随時、学生各々の状態を評価し、アドバイスを送ることができるようになっています。その協力者たるや、運動生化学(征矢教授)や体力学(鍋倉教授)、スポーツ栄養学(麻見准教授)、陸上競技研究室(大山准教授)、一般社団法人・日本パーソナル管理栄養士協会(JPDA)代表理事(本学大学院修了 三城円さん、中田恵理さん)ら多才な頼もしい顔ぶれに加え、ARIHHP(筑波大学体育系ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター)などの最先端の研究センターにも協力を仰いでいます。
そうして、学生たちには、様々なデータを提供されるようになり、自らを分析し、「自分が何をすべきか」を考えるヒントを得られるようになっています。あとは、思考と試行が、予想通りの結果になるかどうかの世界。その感覚が経験を経て研ぎ澄まされることを目指しています。つまりは、箱根駅伝を目指す活動そのものが勉強として成り立つようになってきました。これが私の目指す競技であり、本学の学生の姿と言ってよいのかもしれません。
ただ、それだけではアスリートにはなり得ません。決して忘れてはならないものに、感性と度胸、根性、闘争心、火事場の底力などもあります。10月13日には、このモードに突入してくれることを願って、学生たちが神経をすり減らさないような調整を続けていきたいと思います。