第255回日本体育大学長距離記録会は、12月4日に日本体育大学 健志台グランドで46組の5000mが実施され、筑波大学からは10名の学生が出場し、半数の5名が自己記録を更新した。中でも、3年の森田佳祐が最終組で走り、自身の記録を18秒ほど縮める13分51秒97の大幅な自己新記録をマークした。5000mの13分台は、筑波大学の学生としては史上初の快挙で、偉大な渋谷先輩の記録を約10秒も更新する筑波大学新記録樹立となった。
最終組には、外国人選手を含む実業団選手や大学生、高校生のトップクラスが集まった。森田は、11月13日の同記録会でペースダウンした集団を引っ張り 13分台を逃した雪辱を期して、ハイレベルな組への挑戦を選んだ。並々ならぬ思いで臨んでいるが、「いけるところまで積極的にいきます!」と緊迫感が溢れる最終組にもまったく臆することがない。度胸満点の姿に、大物感を漂わせるほどだ。
入りの400mが64秒と最初からハイペースの展開。森田は、集団の真ん中からやや後方に位置するが、それでも、1000m:2分43秒、2000m:5分30秒、3000m:8分18秒という速い流れ。森田自身もここまでのハイペースは初体験。3000mの通過タイムは、3000m単独の自己記録よりも速い。「集中していたから、まったく速いと感じなかった」と言う。その感覚通りに最後まで脚色はまったく衰えることがなく、1周67秒のペースを維持し、ラスト1周を62秒でカバーし大記録に繋げてみせた。全体8位、日本人では5位というのも立派。
ゴール後は、天を仰ぐようにガッツポーズ。渾身の走りで、筑波大学新記録、自己新記録、全日本インカレA標準記録突破というメモリアルな記録を打ち立てた。森田は、1週間前に1万mを走っており、この日は「ウォーミングアップから身体が重く本調子とは言えない」状態だったとレース後に打ち明けた。それでいて、この走り。ひと皮もふた皮も向けたトップアスリートへの第一歩を踏み出したと言っても言い過ぎではないだろう。チームメイトの激走に、他の学生は身震いしながらも「今度は僕たちの番」と共にトレーニングする仲間として自信を与えられたようだ。チームにとっての大きな核を得たチームは、これから高いレベルで切磋琢磨していけるのではないだろうか。
「筑波大学でもやれる」ということを証明した森田。チームにとっての意義は言葉に表せないほど大きなものと言えそうだ。
他の9名もそれぞれが自己記録更新を目指して力走した。とくに1年生の藤田が自己記録を15秒更新する好走。目標とする14分30秒に僅かに届かなかったが、自身の成長を十分に感じることができたようだ。
14分20秒を狙っていた村上は、スローペースな流れ(1000m~3000mが6分01秒)で集団の中で揉まれリズムを崩し、不満の残るレースとなってしまった。「自ら引っ張るくらいの積極性が足りなかった」と反省。それでも自己記録は更新しており、次こそは!と気合いが入ったようだ。
また、池田は「今季ベストを出して今年最後の5000mを終えたい」と前半を抑え、ラストの1000mを2分42秒でカバーする自分の長所を生かした走りを見せた。そのスピードには“光るもの”があり、諸々の要素が噛み合えば、いづれ大記録を出すのは間違いないと思わせるレースだったと言える。
前回、初めて14分台をマークした中川も、さらに自己記録を更新する連続の14分台を出し、大学院生の吉成も復調を示す走り。一人一人が元気を取り戻しつつある。この調子で年末の松戸市記録会の1万mに進んでいきたい。
他にも嬉しいニュースとして、平賀の自己新記録を紹介したい。平賀は、高校生の時に、アキレス腱を断裂し、走りが崩れたまま大学で競技を続けてきた。その影響で故障続き。3年の9月まで一度もレースに出場することができなかった。そして、この日、高校2年以来の自己新記録をマークした。精神的に腐らずに、度重なる故障や骨折にも決して諦めなかった。そんな「強い生き方」をチームメイトは共有し、共に喜ぶことができた。
記録が速い遅いではない。人に影響を与えられる人生を私たちは歩んでいきたいと強く思う。
<第255回日本体育大学長距離競技会 5000mの結果>
組 | 順位 | 氏名 | 記録 | 備考 |
---|---|---|---|---|
46 | 8 | 森田佳祐 | 13’51”97 大学記録 |
PB |
45 | 18 | 吉成祐人 | 14’33”28 | SB |
43 | 10 | 村上 諄 | 14’37”46 | PB |
42 | 3 | 池田 親 | 14’34”31 | SB |
41 | 5 | 藤田黎士 | 14’35”46 | PB |
37 | 23 | 中川 凛 | 14’56”44 | PB |
30 | 35 | 井口 謙 | 15’20”05 | |
27 | 37 | 薛玄太郎 | 15’37”90 | |
21 | 23 | 赤星佑都 | 15’43”95 | |
17 | 8 | 平賀大一 | 15’46”39 | PB |
※PB=自己新記録 / SB=今季ベスト